研究課題/領域番号 |
16K12388
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研究機関 | 福岡女学院大学 |
研究代表者 |
奇 恵英 福岡女学院大学, 人間関係学部, 教授 (40412689)
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研究分担者 |
大野 博之 福岡女学院大学, 大学院人文科学研究科, 教授 (00037037)
服巻 豊 広島大学, 教育学研究科, 教授 (60372801)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 震災支援 / 主動型リラクセイション療法 / 災害精神保健 |
研究実績の概要 |
本研究は東日本大震災による被災者に対して、災害後6年を迎えた時点で災害精神保健に関する調査を行うことで大震災が被災者の精神健康に与える長期的影響を検証するとともに、主動型リラクセイション療法(Self-Active Relaxation Therapy;SART,以下サート)を行うことで、今後の災害における臨床心理学的介入としてその手法の有効性を検証するものである。 そこで、震災から間もない2011年8月から継続調査及び支援を行ってきた岩手県宮古市において2016年8月及び3月の2回に渡って、計12日間の調査研究を行った。岩手県宮古市では、2015年度後半から復興住宅への移住が具体的に進められており、仮設住宅である程度形成されたコミュニティが仮設住宅の併合や復興住宅への移住で解体されること、また、復興住宅地にすでに形成されている地域コミュニティに入っていく不安や住民間の葛藤の予想が多く語られ、住居が保証されてもさらに大きな心理的不安を抱えることが面接調査で確認された。 一方、本調査研究に継続して参加しているリピーターの一部は、サートを日常的なセルフ・ケアの方法として取り入れており、サートの基本技法を応用した、援助者を必要としない「ひとりサート」が自助努力可能な方法として震災支援に有効であることが推察された。 「ひとりサート」は今後災害におけるセルフ・ケアの方法として有効と考え、援助者がいる場合の「援助ありサート」と援助者なしで一人で行う「ひとりサート」の特徴と効果の相違点を科学的に検証するために、筋電図を用いて検討した。その結果、「援助ありサート」の場合は心理的安定感や爽快感がより高く、「ひとりサート」の場合は最初に不安感はあるものの、徐々に軽減し、身体的リラクセイション効果についてはどちらの方法でも得られることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、2016年8月1日(月)~8月6日(土)及び2017年3月19日~3月25日の2回に渡って、岩手県宮古市において調査研究を行った。 仮設住宅、集団住宅、復興住宅など生活環境の違い、初めての調査対象群とリピーター群といったサート経験の違い、など属性の異なる95名を対象に、『生活不活発病チェックリスト』、『簡易GHQ(General Health Questionnaire)』『SQD(災害精神保健に関するスクリーニング質問票;Screening Questionnaire for Disaster Mental Health)』の3つの質問紙調査を行うことができた。 なお、生活環境の変化に対する適応感、震災体験の振り返り、現在の心身の状態及びサートの活用などを中心に、継続支援を通して関係が安定し、了解を得られたリピーターを中心にインタビュー調査を行った。質問紙調査では十分にくみ取ることが難しい被災者の心理状態について示唆に富む内容が得られた。 一方、支援技法の科学的検証、高齢者が多く認知症を有する対象者もいることから身体的アプローチにおけるコミュニケーションの工夫などに関する検討を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画通り、2017年度及び2018年度に岩手県宮古市において計4回(各一週間)の研究調査を行い、データを収集、蓄積する。 大災害が被災者の精神健康に与える長期的影響の視点から、2017年度には調査対象群のリピーターを中心とした縦断的検討、リピーター群と新しい調査研究対象者の比較によるサートの有効性に関する検討を中心に、学会発表または研究発表を行う予定である。
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