本年度も熊本地震によって被災した商店街を対象に、通行量調査や店舗の復旧状況調査を定期的に実施し、店舗の復旧状況と消費行動の関係を分析するためのデータを蓄積した。得られた情報をもとに、大規模な被害を被った旗艦店舗の復旧に伴う地域の通行量やにぎわいの回復、さらには地域の魅力度を高めるコミュニセンターの役割に関してとりまとめを行った。 次いで、熊本県全域の約2000世帯のご家庭を対象とした、震災直後からの消費行動の変化についてのアンケート調査結果を用い、消費支出品目別の回復状況について分析を行った。震災後1年半が経過しても娯楽関係や教育関係費用が回復していない家計が13.7%存在するなど、災害による被害や収入の減少と経過期間に応じた消費支出状況の変化等が明らかとなった。 さらに、地域の供給構造と需要構造の変化による地域経済全体への影響を評価するために、昨年度構築した空間的一般均衡モデルの改良に取り組んだ。特に、需要構造の変化を反映するために、東日本大震災後の公共工事請負額と製造業の投資財の生産状況の分析を行った。公共工事が本格化するのは震災後半年程度経過した時点となった一方で、製造業の投資財については、震災後2~6ヶ月程度の比較的短期間において生産割合が他の財よりも増加している傾向が見られた。これらをパターン化し、これまで検討を行ってきた家計の消費構造の変化に関する分析結果とあわせることで、災害後の需要構造の変化が地域経済へ与える影響を把握するための評価プロセスを作成した。 上記も含めて、本研究課題では、過去の災害復旧過程における家計の消費構造や企業・政府の投資行動について調査を行うとともに、得られた知見を災害時特有の問題を考慮した一般均衡モデルに反映するための検討を行った。本成果は、地震災害による地域経済への影響をより詳細に把握するための方法論の確立に寄与することが期待される。
|