本提案は,複数電源,複数負荷からなる電力ネットワークにおける電力エネルギー伝送について,電源(送り手)の発電電力と,負荷(受け手)の消費電力が常に一致するように分散協調制御することで,仮想的に特定の電源から特定の負荷へ電力が配送されたように見せかける技術の実現を目指している.つまり負荷からみると,電力を供給する電源を選択できるようになり,ネットワーク全体でみると,余剰電力や電力不足が発生しない電力ネットワークを構築できる.本提案を実現するためには,電力が自律変動する負荷や電源(自然エネルギー発電など)の電力変動情報を,電力制御可能な電源や負荷に送信,共有し,同期制御することが重要である. 平成28年度には,可制御電源2台,変動負荷2台という構成で,負荷の変動に合わせて可制御電源の出力をコントロールすることで仮想的に特定の電源から特定の負荷への電力供給を実現するアルゴリズムを提案し,また実際にシステムを構築し,その有効性を検証した. 最終年度である平成29年度では,前年度におこなったシステムをさらに一般化し,変動電源,可制御電源,変動負荷,可制御負荷が混在している場合における,変動電源ー可制御負荷間,可制御電源ー変動負荷間,変動電源ー変動負荷間,可制御電源ー可制御不可間というすべての組み合わせに対して,仮想的に電力伝送を実現するアルゴリズムを考案した.また,電力フローも1対1の関係だけでなく,複数電源からの電力供給や1電源から複数負荷への電力供給など,一般的な供給パターンに対応するアルゴリズムを構築した. また実際に3電源(系統電源,太陽電池,蓄電池)と3負荷(テレビ,扇風機,ヒーター)という構成で,仮想的な電力カラーリングを実現した. また,国際会議3件,英文論文誌1件の成果発表をおこなった.
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