最終年度は研究成果の論文化に向けて、研究成果の洗練化と詳細な解析に取り組んだ。昨年度、カエルの合唱法則のモデル化として、位相、疲労度、体力を定義し、発声状態と休止状態を確率的に遷移させるハイブリッドな力学モデルを提案した。このモデルを用いて、短時間スケールではカエルが交互に鳴く現象、そして長時間スケールでは協調的にモードを切り替える現象を定性的に再現した。しかし、数値シミュレーションの際に設定したパラメータ値については、根拠があいまいなものが複数残されていた。そこで、ニホンアマガエルの鳴き声の長時間データを複数解析し(4時間分の音声データを4セット)、発声間隔、総発声回数などを定量化し、その結果に基づいて数値シミュレーションをやり直した。その結果、パラメータ値に用いたもの以外の実験結果についても、うまく再現できることがわかった。また、実験結果については、オーストラリアに生息するアカメアメガエルのデータも解析し、種が変わっても長時間ダイナミクスに関してはある程度共通した傾向を示すことを確認した。 次に、無線センサネットワークへの応用について分担者の小南らと繰り返し議論し、現実的な設定を模索した。その結果、昨年度よりも実際のネットワークに近い状況で、パケット衝突を効率的に回避したり、ネットワーク全体の接続性を維持できることを示した。さらに、実際の調査への応用として、無線センサネットワーク型のマイクロフォンアレイを構築し、マイクロフォンアレイごとの計測データを統合することで野外環境での音源定位を実現した。今後は、このような実際の計測システムの制御に提案モデルを応用することで、その有効性を検証していく必要がある。 以上の研究成果は、学術論文3編(査読あり1編、査読なし2編)として公表したほか、学会にて口頭発表1件を行なった。
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