本研究課題の最終年度である本年度は、これまでの研究を実践的に発展させるための課題に挑戦した。第一は、複数の危険臓器(OAR)の考慮である。腫瘍に対する放射線治療において、治療の際に考慮しなくてはいけない臓器は1つではない。放射線の照射回数および線量に依存して、各臓器への影響(副作用)が異なる。特定の臓器のみに着目するのは適切ではない。第二は、複数の腫瘍が存在する場合の治療計画である。多くの症例では、腫瘍が複数存在する。その場合、治療の順番または同時照射の可否など治療計画の立案に関して多くの選択肢がある。これらにおいて数理モデルを設定し、評価することは重要である。 第一の課題については、複数のOARに対するDamage Effectを照射計画(例えば、照射回数)ごとに可視化する方法を開発・改良した。可視化において、各OARへのEffectは、昨年度の成果である、ASFを用いた。これは、従来のIBEDよりも妥当な値である。また、腫瘍およびOARへの影響モデルとしてUSCを用いた。この可視化により、各OARへの影響を総合的に勘案しながら、最適な放射線治療計画を決定することに寄与することができる。 第二の課題は、数理モデルとして最適解の導出が非常に複雑な問題であることが示された。これは、従来の治療計画策定の考え方を変える可能性がある。数値計算および理論的考察により、各種条件を検討することができた。 以上により、放射線治療に対するより実践的な問題設定と部分的な解を示すことができた。
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