研究課題/領域番号 |
16K12405
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中村 宏 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (20212102)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 計算機システム / 省電力 / 実行モデル |
研究実績の概要 |
IoTに代表される広域分散センシング環境での処理を対象として、2種類の問題クラスに対する処理の制御モデルを検討した。1つは、電源供給は安定であるが、データに対する処理時間がデータに依存し実行時に決定する問題である。ただし処理量の最大値と最小値は既知であるとした。これは、IoT環境では処理はあらかじめ規定されているため妥当な家庭である。この場合の総消費エネルギーをモデル化し、目的関数を総消費エネルギーの最小化とし、時間軸上の処理の最適な制御を導出するアルゴリズムを作成した。初期評価により、処理時間が常に最悪値、すなわち処理量が常に最大値をとってもデッドラインを守るような保守的なスケジューリングに比べ、提案手法は総消費エネルギーを大きく低減できることを明らかにした。もう一つは、移動体においてGNSS(Global Navigation Satellite System)により位置情報を定期的に得るシステムである。この場合、電源供給はバッテリー駆動で安定ではない。また処理中において、衛星の補足に要する時間が変動する。ただしこの場合、衛星補足に要する時間はデータに依存するのではなく、待機時のセンサーの電力モードに依存する。つまりDeep Sleepモードでは衛星の位置情報を追随できず、再起動時に衛星補足に要する時間が長くなり、再起動に要するエネルギーが大きくなる。従って、待機時間が長い場合には、Deep Sleepモードで待機し、待機中のエネルギーを削減することが重要となるが、待機時間が短い場合には、起動後にすぐに衛星を補足できるように、Shallow Sleepモードで待機する方が有利である。電力モード自体が処理の制御方法の結果であるため、このクラスの問題ではこの点を考慮した最適化が必要となる。この問題に対し、総消費エネルギーをモデル化し、最適な制御方法の初期検討を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画で最も重要であった、データ処理と消費エネルギーの関係のモデリングを、処理時間が実行時に決定するという新しい問題に対して行うことができた。処理時間が実行時に決定する問題に対し、処理の時空間上でのスケジューリングと消費エネルギーの関係を導出できたのは、大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
基本的な最適化アルゴリズムは構築できたので、より広いパラメータ空間の問題に適用するとともに、実際のシステムの実測値を用いることでより精度の高い消費エネルギーを求められるように評価ツールを完成させることで、提案手法の有効性検証に注力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の遂行に必要となる最低限のものに対してのみ支出をする努力を払ったために、若干の額が次年度使用額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は小さいため、当初予定通りの研究を遂行することですべて使用できる予定である。
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