研究課題/領域番号 |
16K12407
|
研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
中島 康彦 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 教授 (00314170)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ライトフィールド動画 / アクセラレーション |
研究実績の概要 |
市販最大解像度の8K-Light Field Cameraを購入し、一次画像データを用いて、メニコア、GPGPUなどの既存計算基盤上における圧縮・復元・能動表示の性能評価、および、ハードウェアによるアクセラレーション効果の見積りを行った。 【1】圧縮・復元については、8K動画向け最新HEVC規格に準拠したエンコーダ(Kvazaar)を使用し、ライトフィールド画像特有の多数微小レンズ画像とHEVCエンコーダの親和性について調査を行った。評価の結果、ライトフィールド動画を圧縮する場合、一般的な8K動画向けに実装されている多くのHEVC圧縮手順が省略できること、また、不要な機能を削除して専用ハードウェアを小型化できる見通しが得られた。また、HEVCハードウェアエンコーダに関する先行研究と比較しながら、ライトフィールド動画圧縮専用ハードウェアの規模を見積もった結果、圧縮率優先構成では先行研究の8K動画圧縮ハードに対し、50%のハードウェア増加により平均34%の圧縮率向上が可能であること、また、小型化優先構成では先行研究に対し、24%のハードウェア削減と平均6%の圧縮率向上が可能であることを明らかにした。 【2】能動的に鑑賞できる4D表示環境の実現 復元した一次画像を可視化するレンダリングと、一次画像から奥行き情報を取り出す距離計測を高速に行う計算基盤について、GPGPUとCGRAによる性能評価を行った。GPGPUの特性を生かすチューニング手法を考案し、GTX-780ではレンダリングと距離計測を各々30%、82%高速化することに成功した。さらにCGRAによる高速化にも取り組み、ライトフィールド画像処理に特化したCGRAの詳細シミュレータを開発して評価した結果、提案CGRAは、組み込みGPUの3分の1の計算資源でも、レンダリングで89%、距離計測では4倍の性能を達成できる見通しを得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画時点で設定した項目を着実に遂行できている。特にライトフィールド動画処理において問題となる、膨大な計算のアクセラレーションについては、具体的なハードウェア設計に繋がるレベルの詳細シミュレータおよびコンパイラなどツールチェイン一式が完成しており、次年度に向けてさらなる発展研究へ移行できるレベルに達している。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画通り、以下を遂行する。 【3】超高速能動表示のための準専用ハードウェアの策定 アルゴリズムの主要なパラメタを設計後に調整可能な準専用ハードウェアの策定を開始する。既存技術のうち最も近いハードウェア構成はCGRAであり、初年度においてモデル化した構成をさらに詳細化する。シミュレータや現有FPGAシステムを利用して性能見積もりを行い、最終的にはASIC化容易な基本設計を完了する。 【4】臨場感演出に最適なハニカム構造画像形式の最適利用技術 最近登場した高解像度Light Field Cameraは、ハニカム構造の微小画像を採用している。この形状は、精度の高い球形微小レンズの最密配置に対応させることで、微小画像の辺縁部分の歪を格段に減らせるメリットがあり、画像全体に占める有用なデータの比率を向上させ、全体4D映像再生時の臨場感向上に大きく貢献できると予想される。しかし、ハニカム構造は、映像をメモリに格納し取り出す際のアドレス計算(座標計算)を極めて複雑にするため、離散ステンシル計算の計算量をさらに増大させる。最終的に、このようなハニカム構造の高精度原画像に対して超高速に4D映像処理を行うことができるプロトタイプシステムを完成させ、4D映像による真の臨場感演出の効果を実証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
初年度に購入を計画していた2台のライトフィールドカメラのうち、1台は在庫がなくなる懸念があったため、初年度研究開始直前に、使用可能な別予算にて緊急購入する必要があった。また、もう1台は大幅な価格上昇に伴い、購入困難になった。このため、計画段階にて計上していたライトフィールドカメラ購入費がそのまま残る形となった。一方、研究が順調に進捗したため、LSI化可能なレベルの詳細設計が進み、FPGAによるプロトタイプ実装を推進している。大規模回路を構成するためには複数のFPGAボードを相互接続する必要があり、このための高速FMCケーブル(80Gbps)一式の購入に充てることとしたが、本ケーブルは特注品のため、製造に時間を要する。初年度内の検収に間に合わないことから、2年度に発注する計画である。
|
次年度使用額の使用計画 |
前述の高速FMCケーブル一式の価格は80万円である。また、2年度に購入可能となる大容量FPGAボード、さらに、2年度に行う成果発表の旅費を予定しており、計画的に執行する。
|