近年のソフトウェアシステムは環境変化に対して柔軟に動作を継続する自己適応性が求められる.従来の開発手法では,開発時に想定された環境変化に対してのみ保証を伴った適応を可能にする.しかし,実行時に直面する環境変化を開発時に想定し尽くすことは困難である.従来の開発手法では想定漏れのリスクは避けられず,リスク低減のための過度な設計は開発工数の飛躍的な増大を招く.そこで本研究提案では,「開発時の想定に漏れた環境変化」に対しても耐えるソフトウェアを実現するための実行時モデル更新技術を提案する.環境・要求・動作仕様モデルをシステムが実行時に保持し,想定から漏れた変化を環境モデルに反映し,安全性を保証する動作仕様をシステム自身によって実用的な速度で導出する技術の確立を目標とする.
平成29年度では,実用に耐えうる品質となるように [実施項目1]環境モデル実行時更新技術,[実施項目2]保証を伴う動作仕様の実行時導出技術を拡張,発展させた.平成28年度の評価結果を踏まえ,実行速度,精度等の観点から品質上の課題を洗い出し,各技術の洗練化を行った.また,洗練化された技術を複数の例題で評価し,開発工数と,環境変化に対する頑健性の観点からの評価を行った.
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