近年、スマートフォンの爆発的な普及に伴い、ユーザの位置に基づいて多様なサービスを提供する位置情報サービスが注目されている。位置情報サービスの利用のためには、ユーザの現在位置をサービス提供者に送信する必要があるが、位置情報は重要なプライバシー情報であるため、その漏洩の危険性が心配されている。本研究では、位置情報サービス利用時のユーザの位置プライバシー保護を目的として、複数のダミーの位置情報を生成する実用的な手法を考案する。最終年度の平成29年度は、以下のように研究を推進した。 平成28年度に考案した手法の拡張を行った。特に研究項目2の「ユーザの事前入力の手間を軽減するダミー生成手法」として、訪問場所のみをユーザが指定したりする場合を想定し、ユーザの移動プランを予測した上でダミーを暫定的に生成し、ユーザの実際の移動状況に基づいて適応的にダミーの移動パターンを変更する手法について、重点的に研究開発を推進した。詳細なシミュレーション実験により、本年度に考案した新手法は、平成28年度の考案手法よりも性能が大幅に向上することを確認した。 さらに、今年度に考案した手法に対して、被験者による視認性実験を行い、考案手法によって生成したダミーが、実際に人の目から見ても動きが不自然ではなく、ユーザと識別が困難であることを確認した。また、考案手法はユーザとダミーを早めに交差させるため、ユーザの位置が攻撃者に対して一旦明らかになった場合にも、既存の手法と比較してより短時間でユーザの位置を再びあいまい化できることを確認した。
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