研究課題/領域番号 |
16K12431
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
越前 功 国立情報学研究所, 情報社会相関研究系, 教授 (30462188)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | コンテンツ流通・管理 / 生体情報保護 / 生体認証 |
研究実績の概要 |
高解像度カメラや静脈認証センサの普及により,被撮影者の指紋・掌紋・静脈等の生体情報が意図せず取得され,悪用される可能性が指摘されている.生体認証に用いられる生体情報は終生不変のため,当該情報の漏えいは当事者の生涯に渡り不利益をもたらす危険性がある.本研究では,人間とアルゴリズムによる生体情報の認識の差異に基づいて,指紋等の生体情報のパターン認識を失敗させるジャミングパターンを被撮影者の指表面や手のひらに転写することで,視覚的違和感がなく,利便性を保ちながら,カメラやセンサ経由で取得した生体情報の認識を不能にする手法(バイオメトリックジャマー)を確立する. 平成28年度は, [目的1]人間とアルゴリズムによる生体情報の認識の差異を利用したバイオメトリックジャマーの原理確立の検討を実施した.この手法の検討にあたっては,視覚的違和感を生じず,利便性を保ちながら,カメラやセンサ経由で取得された生体情報による生体認証を不能にすることが重要である.そこで本研究の課題として下記の2つに取り組んだ. [課題1-1]生体認証アルゴリズムの分析によるジャミングパターンの基本検討:本課題では,視覚的違和感を生じずに,生体認証アルゴリズムが参照する指紋情報の特徴量を変更するために,指紋の生体特徴(端点や分岐点)を模擬したジャミングパターンを指表面や手のひらに重畳することを検討した. [課題1-2]ジャミングパターンの視覚的違和感軽減と認識妨害効果の向上:[課題1-1]で決定したジャミングパターンをリファレンスとして,ジャミングパターンを実際に指表面に転写(印刷)する際に使用する顔料の反射・透過率をパラメータとしてシミュレーターに実装し,上記パラメータを含めた最適な明暗パターンを決定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
検討したジャミングパターンの基本検討に関する国内論文発表(2016年10月)および特許出願を行った.さらに,本研究成果を2017年3月20日~24日にドイツ・ハノーバーで開催された国際情報通信見本市「CeBIT 2017」において公開した.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は研究計画の最終年度であるため,遅延がないように進めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年4月に[課題1-1]生体認証アルゴリズムの分析によるジャミングパターンの基本検討を行ったところ,想定以上にジャミングパターンの模擬数や重畳領域の決定に工数を要したため,[課題1-2]ジャミングパターンの視覚的違和感軽減と認識妨害効果の向上に関する評価実験の一部を平成29年度に実施する必要が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
[課題1-2]ジャミングパターンの視覚的違和感軽減と認識妨害効果の向上に関する評価実験の一部を平成29年度に実施する必要が生じたが,平成29年度においては,評価実験の効率化を図ることで,全体の計画を遅延なく実施する予定である.
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