本研究は脳機能イメージングを用いて、脳内身体マップに基づく指運動能力の個人差の検討を行った。実験ではまず、健常成人40名を対象にし、スクリーン上の指示に従って示指、中指、環指、小指をそれぞれ使ったタッピング運動を1Hzで繰返し12回ずつ実行してもらった。その運動中の脳活動を、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を使って計測した。そしてタッピング運動中の脳活動の空間的なボクセル活動パターンを解析した結果、一次運動野の活動を使って4本それぞれの指パターンを識別できた、すなわち被験者がどの指を動かしているかを脳活動パターンから識別することが可能であった。また運動実行時のみならず、実際の運動実行をともなわないイメージ化のみでも指パターンを識別することが可能なことが示され、このことから一次運動野における運動実行時の指マップが、個々の指運動のイメージ化にもかかわっている点が示された。さらに指運動スキルの個人差について調べた際に、実験参加者のこれまでのピアノ練習経験の違いに応じて、タッピング運動中の一次運動野の指の神経表現が異なっていることが示された。またfMRIのリアルタイム処理に基づくニューロフィードバックを使って、被験者自身に一次運動野の活動レベルを視覚提示するシステムを開発した。そしてニューロフィードバックを使った運動イメージ化を用いて一次運動野の活動を上げることにより、その後の指運動のパフォーマンスが促進される可能性を示した。
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