研究課題/領域番号 |
16K12444
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
苧阪 直行 京都大学, 文学研究科, 名誉教授 (20113136)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 笑い / ハイパースキャニング / 社会性 / fNIRS |
研究実績の概要 |
人間は豊かな社会性を身につけることで、他者の心を理解し、他者と笑いや微笑みを共有することができる。笑いや微笑みを導く動作や表情、会話、さらにユーモアやジョークの理解は豊かな社会生活を営む際に必要なポジティブな情動を高め、他者と共感を分かち合う基盤ともなる。本研究課題の目的は、この「笑い」がどのような認知メカニズムおよび脳内神経基盤によって成立しているのかを明らかにすることである。平成28年度は、二者間の自然な対話状況において生じる社会性の笑いが、両者の神経的な同期的活動によって生じる、あるいはそうした同期的活動を引き起こすという可能性について検討するために、対話状況における二者の脳神経活動を機能的近赤外分光法(fNIRS)による複数人同時計測(ハイパースキャニング)によって計測した。得られた二名分のデータから、ウェーブレット・コヒーレンス相関法(WTC)分析によって各チャンネルごとに同期の程度を算出することが可能となる。本実験によって得られたデータは現在詳細な分析を行っているところであるが、一部の測定チャンネルにおいて、対話状況においてそれ以外の場合と比較してより同期的活動を示す可能性が見出されている。分析をさらに進めることによって、二者間で笑いが生じる時間的なプロセスについて明らかとしたい。また、次年度以降に実施する予定である機能的磁気共鳴画像法(fMRI)実験において用いる予定のユーモア刺激の選定も併せて進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、当初の研究計画から多少の変更をしながらも、二者間で生じる社会性の笑いについて、予定どおりに二者の脳神経活動を同時に計測するハイパースキャニングによるイメージング実験を実施した。得られたデータは現在詳細に分析中であるが、本研究はおおむね交付申請時に記載した実験計画に従って進んでいるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は平成28年度に実施した実験についてより詳細な分析を行いつつ、辺縁系や側坐核など深部脳の活動も観察可能なfMRIを利用し、笑い発生時の血流動態をBOLD信号から評価する実験を行う。例えばユーモア漫画呈示の場合、刺激呈示の3秒後にfMRIのBOLD信号の上昇が側坐核や内側前頭前野で観察されていることから、同様のブロックデザインを用いた実験を計画している。刺激としては、ユーモア評価が高得点及び低得点の新聞の4コマ漫画を用い、そのBOLD信号値から信号変化率を測定する。本研究課題を通して、最終的には笑いの脳内起源領域が前頭葉外側面のミラーニューロン領域と、内側面の辺縁系や側坐核にある事を確認し、モデルを完成させることを目指している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度には当初予定していた研究計画をさらに発展的に展開するために、京都大学医学研究科精神科との共同研究として、統合失調症患者に対するfMRI実験を行う準備のための予備実験に取り掛かることを計画していたが、実験条件の設定や参加者側との調整が難航し、年度中に実験を実施することができなかった。このため、実験実施を次年度以降に繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、引き続き統合失調症患者を対象とした実験を実施することを予定しているが、上記の理由等により年度中に実験を実施することが難しいと予想される場合には、健常者を対象として当初の研究計画から展開させた課題を実施することを計画している。次年度使用に計上した予算はこの実験に利用するfMRI装置のレンタルおよび参加者への謝金支払い等のために使用する予定である。
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