研究課題
本研究の目的は、長文読解経験の想起過程に着目し、海馬-連合野-環境のループ系における神経回路モデルを構築することで、全体の計算論的な機能デザインを解明する手がかりを得ることである。平成30年度までの研究において、海馬連想記憶回路の枠組みで文章の想起活動をモデル化したものの、想起における時間階層的な活動(文や段落に相当する数秒から数十秒単位の処理)を検討するために、新たなヒト被験者実験を要すると考えられた。また、平成30年に報告した脳波及び機能的脳画像研究では、記憶関連部位の活動と記憶成績はデフォルトモード回路およびサリエンス回路の活動抑制と関係することを明らかにした。これは全脳の機能デザインの重要な手がかりであると考えられた。そこで平成30年度は、刺激反応課題中の低周波数脳波(0.01~0.1Hz)と課題関連脳波の関係を明らかにするためのヒト被験者実験(14名)を行った。低周波数脳波(0.01~0.1Hz)はデフォルトモード回路と関係すると考えられているが、その他周波数帯の課題関連脳波との関わりはこれまで十分に調べられてこなかった。本解析ではアーチファクトが少ないデータが必須のため、長文読解課題を断念し、単純反応課題(視覚、聴覚)を用いた。予備的な解析によれば、低周波数脳波の頭皮上の大域的な時空間位相パターンが刺激反応速度と有意に相関することが示されており、今後国際学会などでの発表を予定している。さらに、低周波数脳波の位相構造と課題関連脳波の関係を検討、モデル化することで、今後、全脳の計算論的な機能デザインを明らかにできると考える。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
eNeuro
巻: 5(5) ページ: 1-12
10.1523/ENEURO.0122-18.2018