本研究の目的は、幼児期特有の非論理的な発話である転導推理と人工物や無生物に対して人間のような行動や感情を付与するなどの擬人化(アニミズム)について、そのメカニズムをベイズ推定に基づき考察し、その脳内基盤についてのモデルを構築することである。本研究では、親によって投稿された子どものユニークな発話の中から転導推理と擬人化を抽出し、横断的な分析を行い、同時にその信頼性を担保するために、少数名の幼児の縦断的データを取得し検討することとした。 1)横断的データ:平成30年度は、前年度に引き続き2000年1月から2015年12月までの16年間の新聞コラムに投稿された子どものユニークな発話内容データを分析している。質的分析に加え、テキスト分析などの量的分析も加え、多様な側面から内容分析を現在も進行中である。 2)縦断的データ:49名の幼児(3歳あるいは4歳から6歳まで)の母親または保育士が子どもの発話の中からユニークな発話を記録したものである。合計693発話・一人当たり平均14個・一年平均5個となっており、49名の幼児のほぼ2か月おき(すべてが2か月おきではない)の発話が3歳から6歳まで継続して入手することができた。現在は、共起ネットワーク分析手法も含め、多様な分析方法を用いて特徴分析を行っており、論文にむけた準備を行っている。 3)転導推理のモデル化・擬人化のモデル化についても、現在分析と同時に論文執筆を行っている。 4)Bayes推論の脳内機構に関する大統一理論である自由エネルギー原理について詳しく吟味し、その感情および感情障害に関するモデルについての考察を行った。
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