新薬開発や遺伝子操作の評価への応用を背景とし、長期間の観測に耐えるコンピュータの利点と,観測から新たな知見を発見できる人間の利点を活かす行動解析技術の開発を目指して研究を行った.この技術の実現のために,カメラの設置位置などの観測状況に依らないマウスの行動観測(課題1),及び姿勢記述モデルの構築(課題2),さらに,得られる姿勢の時系列データに対するボトムアップな行動分析方法の開発(課題3)に取り組んだ. このうち,課題1については,初年度に作成した観測装置に対して改善を行い,実際に投薬による影響を受けた群を含むマウスの行動観測データセットの作成までを完了した. 課題2については本来予定していた姿勢推定結果に基づく動作記述にとって重要な3つの特性に注意したモデルの設計・学習法の提案を行った.(a) 研究者の主観が入りにくい特徴であるという性質,(b) 背景領域の影響を受けない特徴であるという性質,および(c) カメラとマウスの相対的な位置関係に依存しにくいという性質.性質(a)については,手作業で作成するラベルなどのアノテーションを用いずに観測データ自身を教師信号とする自己教示学習を導入することで実現した.また性質(b)については,そのような特徴となるような特徴の加工方法を提案した.最後に(c)については,(b)で得られた特徴がすでにある程度位置関係に依存しにくい性質を持っていることを確認したが,今後,改良を行い,学習方法によってこのような性質が担保されるような改善を図る予定である. 課題3については,昨年度に予定以上の進捗があったため,この成果を利用し,課題2に先行してNAIST駒井研の協力のもと既存の動作特徴を用いた解析を予備実験として行った.また,年度末までに課題2で設計した深層学習モデルから得られた特徴に対しても同様の解析を行い,一定の成果を得た.
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