研究課題/領域番号 |
16K12469
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
奥 寛雅 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (40401244)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 拡張現実 / 再帰性反射材 |
研究実績の概要 |
平成28年度は主として食材を材料とした再帰性反射材の成型方法について研究を行った.再帰性反射材を実現する原理として,大きく分けてコーナーキューブ型とビーズ型の2種類がある.後者のビーズ型は素材の屈折率に2.0近い値が求められ,食材でこれを満たす候補が見つけられなかったため,コーナーキューブ型での実現を目指すこととした. まず最初に,素材の候補として,透明かつ成型可能な食材である,還元パラチノース,アルギン酸ナトリウム,グルコマンナン,ローカストビーンガムとカラギーナンの混合物(以下カラギーナン混合物),寒天,の5種類を選んだ.これらについて分光光度計で透過率を計測したところ,カラギーナン混合物と寒天が比較的可視光域で高い透過性をもつことが判明した.グルコマンナンはゲル化以前の状態でも粘性が高く,気泡の混入による透過性の低下が避けられないことが判明したため,この時点で候補から外した. 次に,これらの素材を用いて実際にコーナーキューブ形状を成型する実験を行った.当初型として独自に金型を作る計画であったが,金型の製作が予想以上に困難であることが判明し,市販のプラスチック製コーナーキューブを型として成型する方法に変更した.還元パラチノースは一種の飴であり,成型には高い温度が要求され,プラスチック製の型も変形してしまう恐れがあったために本年度は候補から外した.成型実験結果から,アルギン酸ナトリウムは成型が難しいことがわかり,カラギーナン混合物と寒天を最終的な候補とした. 試作した再帰性反射材による反射強度を計測したところ,寒天製は強い反射光を実現するのに対し,カラギーナン混合物はほとんど光を反射しないことがわかった.これは形状再現の忠実製の良し悪しによるようであった.以上の結果から,寒天が再帰性反射材の素材として適しており,成型で食べられる再帰性反射材が実現できることが判明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は食べられる再帰性反射材の成型方法を確立することを目標としており,実際にこの目標どおり寒天を素材とする成型方法を確立できた.また,試作品は再帰性反射材として機能しており,カメラからの認識も可能であることが判明した. これらのことから,おおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,当初の計画どおり,成型した再帰性反射材を用いて,ARマーカー機能試験と応用実験を行い,実応用における有効性を実証する予定である.具体的な計画は以下の通りである. (H29-a) 食べられる再帰性反射材による光学マーカー特性試験:開発した食べられる再帰性反射材がカメラ用マーカーとして有効に機能することを,実環境における対象の位置認識に応用することで実証する. (H29-b) 食べられる再帰性反射材によるAR マーカー機能試験:開発した食べられる再帰性反射材に加工を施してARマーカーとして機能する試作品を開発する.開発した試作品を利用して,対象の位置に加えて姿勢も検出できることを示し,その有効性を実証する. (H29-c) 食べられる再帰性反射材の応用実験による有用性実証:開発した食べられる再帰性反射材を利用して,内視鏡応用を想定した変形物体表面の画像レジストレーション実験と,エンターテイメント応用を想定した料理へのプロジェクションマッピング実験を行い,これらを通して実応用での有用性を実証する. また,以上の成果に関して外部発表を積極的におこなう.
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備考 |
以下の2件の賞を受賞した. ・2017年 インタラクション2017 インタラクティブ発表賞(PC推薦) ・2017年 インタラクション2017 インタラクティブ発表賞(一般投票)
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