研究課題/領域番号 |
16K12470
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鳴海 拓志 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 講師 (70614353)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 行為主体感 / ヒューマンインターフェース / 自動運転 / 認知科学 / 人間機械協調 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,自律型運転システムから運転支援を受けるドライバに対し,自らが操作しているという感覚である「行為主体感」を強く生起させることで,自動化に伴う油断や人と機械の不調和に基づく事故を防ぎ,運転中の安心・安全・快適を向上させる手法を明らかにすることである.行為主体感が行為結果の予測と身体知覚を通じて得られる実際の結果の整合性から生じることを考慮し,(1)システムの状態に応じてプライミングとなる多感覚刺激を与え予測を変化させる手法,(2)固有感覚を刺激し,運動錯覚を生起させることで身体知覚を変化させる手法の両面から行為主体感を増幅させる手法を構築する. 平成28年度は,昨年に引き続き行為主体感や車も含めた道具を自分の体のように感じる感覚である身体所有感に着目し,それらの生起手法と,それらが生起された場合の知覚や認知への影響について検証した.特に車両に身体所有感が生起した際に距離知覚がドリフトする可能性について検討するために,アバタの身体部位のスケールと物体のスケール知覚の関係を調査する被験者実験を行った.この結果,アバタの身体部位の表示スケールを操作すると,知覚される物体のスケール知覚が変化して感じられる(Body-based Scaling; BBS)ということが分かった.また,比較的簡素なアバタでもこの効果が生じ,車両においても手動運転時と自動運転時で身体所有感の差から距離知覚が変化しうる可能性を見いだした. また,自動運転システムにおいて行為主体感が低いことによって酔いが発生しやすくなるという点に着目し,固有感覚を刺激して運動錯覚を生起させることで酔いを低減させることが可能かを検証した.検証の結果,映像中の加速成分に応じて,歩行時に近い足の運動を運動錯覚によって想起させることで,酔いが軽減できる可能性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の初期段階の構想から発展し,行為主体感や身体所有感の生起による知覚のドリフトや,行為主体感生起による酔い軽減手法の提案など,新規の提案・検証ができている.実験環境を整えるために研究に若干の遅れが生じていることから,全体としてはおおむね順調であると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
簡易なシミュレータにより限定的な状況下での行為主体感生起や酔いの軽減が可能であることを明らかにできたが,シミュレートしきれていない振動等の影響を検討しなければ実際の運転環境で活用できるかが不明瞭な結果となっている.そこで外部(車両メーカ)からの協力を得て,実車環境もしくはより高精度なシミュレータ環境での実験実施が可能な状況を整えられたため,研究を延長して追加実験を行い,成果の有効性を精緻に確認することを狙う.
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次年度使用額が生じた理由 |
簡易なシミュレータにより限定的な状況下での行為主体感生起や酔いの軽減が可能であることを明らかにできたが,シミュレートしきれていない振動等の影響を検討しなければ実際の運転環境で活用できるかが不明瞭な結果となっている.そこで外部からの協力を得て,実車環境もしくはより高精度なシミュレータ環境での実験実施が可能な状況を整えた.そのため,このシミュレータの利用料として次年度使用額を残し,研究を延長して追加実験を行い,成果の有効性を精緻に確認することを狙う.
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