拡張現実感/複合現実感(AR/MR)において、現実空間にCGやテキスト情報を重畳して表示することは最も重要な要素技術の一つであると言える。AR/MRにおいては、単にCGを重畳して表示するだけでなく奥行きを正しく定位させることが重要であるため、3D表示は必須であると考えられるが、現在利用可能な方法はシースルーHMDやスマートフォン等でカメラ画像とCGを重畳して表示する方法、もしくは2D画面をハーフミラーに映して重ねる方法などに限られており、大型の3D映像を現実空間に重畳表示し、それを多人数で見られる方式はほとんど存在しない。本研究ではこれを実現する新しい投影式3D表示技術を提案する。投影スクリーンとしてハーフミラーのように光線を一定の割合で透過および反射する表面を考え、現実空間からの光を透過光、プロジェクタからの光を反射光として重畳表示を実現する。反射光の方向は入射方向と反射面の向きによって決まるため、面方向を周期的に変化させることで1台のプロジェクタからの反射光線を様々な方向に走査する。これに同期してプロジェクタの投影画像を高速で切り替えることにより、時分割で光線方向によって異なる色の光を射出し、3D表示を実現する。平成29年度は前年度に実現した機械的に運動するスクリーンの問題点の解消を目指し、スクリーンに薄膜を採用しこれに進行波を発生させることで周期的に反射方向を変化させる方式を提案し、計算機シミュレーションおよび実験を行ってその基本原理を確認した。
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