研究課題/領域番号 |
16K12482
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
三輪 敬之 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (10103615)
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研究分担者 |
板井 志郎 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (00398934)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 共創表現 / 身体表現 / 手合わせ表現 / ヒューマンインタフェース / インタラクション / 発達障碍 / 自閉症児 |
研究実績の概要 |
平成28年度は,言語的交流の困難さや対人回避傾向などの特徴を有する自閉症児とのあいだで身体的なインタラクションを引きだし,身体全体を使って表現を共に創りあう共創表現インタフェースの開発を目指した.そこで本研究では,手のひらを触れ合わせて即興的に創りあう身体表現を通じて互いの身心が関係づけられていく“手合わせ表現”を自閉症児に促すことが可能なインタフェースの実現を設計目標とした.そして,双方が手のひらで把持し,直接的な身体の接触を必要とせずに表現を3次元的に創り合えることや,自閉症児の五感を刺激しイメージや感性を触発する機能の搭載,さらには安全性を考慮したインタフェースの設計と開発を行った.本インタフェースは長さ430[mm],直径110[mm],重さ約1150[g]の円筒状構造からなり,接触ブロック,円筒ブロック,関節ブロックの三種類のブロックにより構成されている.接触ブロックにはロードセルや6軸力覚センサが内蔵されており,力のやりとりによる表現的関係性の推定や,感覚刺激呈示情報としての活用を可能にした.円筒ブロックには,光の呈示が可能なLEDの他,ロードセル変換器基板と姿勢計測用のセンサを搭載した.関節ブロックには動作自由度を増すための回転機構や,Bluetoothスピーカーによる音呈示機能を持たせた.以上より,本インタフェースは,手合わせ表現にともなう力のやりとりや手の3次元的な位置関係を表現者に光や音の変化としてリアルタイムに呈示することが可能であり,これにより表現で出会い,表現でつながる感性の触発や身体的な気づきを促すことが期待できる.特に,手と手のあいだにあるインタフェースから流れでる音や音楽は,創りあう表現そのものに包み込まれるような感覚や,新たな表現を共に創り出そうとする感覚を生み出す可能性が体験を通じて示唆され,自閉症児への適用に有効であると思われる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
言語的交流の困難さや対人回避傾向のある自閉症児らとの身体全体を使った共創表現の実現に向けて,当初に計画した通り,手と手の間で把持し表現を創りあいながら,表現を引き出すことが可能な音・光のメディアが呈示可能なインタフェースの開発に成功したため.加えて,インタフェースにより取得される力学的情報からリアルタイムに生成される音メディアは,身体的な気づきを促す新しいメディアデザイン手法となることが期待できるため.
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今後の研究の推進方策 |
前年度に開発された共創表現インタフェースを児童福祉施設(石巻市,みらい)や手合わせ表現ワークショップ(宮城県石巻市,東松島市)などの現場に持ち込み,自閉症児らとの手合わせ表現を促すことに有効であるかどうかを実践的に研究する.これに並行して,手合わせ表現活動のファシリテータ(熟練者)や初心者を対象に,本インタフェースを用いた身体表現の計測と主観調査を行う.とくに,共創表現における力性に着目し,双方の手にかかる力の差の時間変化量(表現躍度)や力の平均値の姿勢の変化の違いから表現の評価が可能かどうかを研究する.加えて,表現のカオス性に着目した解析,評価についても検討する.さらに,インタフェースにより取得される手合わせ表現の力性情報を介して表現にズレを生じさせ,身体的な気づきや感性の触発を促すための新しい表現メディアの開発に創造的に挑戦する.以上より,自閉症児をはじめとする発達障碍児とのコミュニカビリティ(交流可能性)を手合わせ表現によって拡大するための共創表現インタフェースの設計手法とその有用性について検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
その他(雑費)を当初予定していた金額よりも安く抑えることができたため.
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次年度使用額の使用計画 |
必要に応じ,研究を円滑に進めるための雑費として使用する.
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