研究課題/領域番号 |
16K12484
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大澤 博隆 筑波大学, システム情報系, 助教 (10589641)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ヒューマンエージェントインタラクション / 擬人化 / ヒューマンインタフェース |
研究実績の概要 |
本研究では、他者の意図を読み取り、他者の視線の動きを合わせるためのデバイスを作成する。本デバイスにより、盲目患者やパーキンソン病患者など、自分自身で自分の思い通りに相手と視線を合わせる等、視線の社会的な機能を阻害されているユーザに対し、視線表出補助(他者の視線検出や他者との指示対象の共有の補助)を行う。視覚障がい者にとって、視線や表情、手振りなどの視覚的な非言語情報を受け取ることは困難な場合がある。インタビューの結果、視覚障がい者が感じる非言語情報は、主に聴覚と触覚から得ていることが分かった。また、相手のアイコンタクトや表情が分からないために、会話についていくことや相手の感情を理解することが難しいという意見が挙がっている本研究ではこのような視線の人工補綴を行う際のデバイスや、アルゴリズムの開発を行うとともに、他者の補助の際に、どのような視線検出が求められるか、検出した視線について、どのようにユーザへフィードバックを行うか、ユーザの操作が間に合わない視線検出と視線表出について、どこまでの自動化が受け入れられるかといったデバイスを使用する際の個々の要素について、研究期間内に対人評価を通じて、検討を行うことになる。本年度は補助のためのデバイスに視線検出装置を取り付け、人工的な目を表示したときのユーザの評価を行った。評価結果として、相手に追従した動きであれば、ユーザが感じる違和感が軽減されることがわかった。以上の研究成果について、人工知能学会全国大会及び国際会議HAI、HRIでの発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は補助のためのデバイスに視線検出装置を取り付け、同時にフィードバック装置を取り付けることで、人工的な目を表示したときのユーザの評価を行った。2者が対面している状態を想定して実装した。まず、お互いが正面を向いているとき、AgencyGlassは対面する相手の視線をセンサによりトラックし、液晶に同じ方向の目の画像を表示する。画像は左右-40°~40°、上下-20°~20°を10°刻みで撮影した。これは、アイコンタクトと共同注視を想定して実装した。対面する相手の顔が回転し、注視する方向が左右に移動したことをセンサが検知すると、AgencyGlassの相手が向いた方向のバイブレーションが振動し、装着者に対面者の向いた方向を伝達する。このとき、目の映像も相手の向いた方向を向き、装着者の顔が相手と同じ方向を向くと、モーションセンサによってそれを検知し、目の映像は正面を向く。相手が再び装着者の方向を向くと、両方のバイブレーションが振動し、先ほどと同様に目の映像は制御される。評価結果として、相手に追従した動きであれば、ユーザが感じる違和感が軽減されることがわかった。ただし、外向的な被験者と内向的な被験者で、ユーザの反応が異なることがわかってきた。また、全盲の人19名、弱視の人1名の計20名に対して、対面コミュニケーションにおける非言語情報と、視覚的情報の欠如による問題についてインタビューを行い、追従をベースにした反応がより好ましいと取られることがわかった。以上の研究成果について、人工知能学会全国大会及び国際会議HAI、HRIでの発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
事前の評価により、外向的な被験者と内向的な被験者で、ユーザの反応が異なることがわかってきた。被験者と実験者のインタラクションの内容に差がでないようなタスクを用意することによって、正確なデバイスの評価が可能となると考えられる。また、デモンストレーションをおこなうことによって、視覚障がい者にとってデバイスが有効かどうかを評価することが出来ると考えられる。以上の点を踏まえて、今後の評価を行う。また、デバイスに関して、現状の視線センサモジュールは、出力する値の信頼度が低く、誤ったフィードバックや視線制御をおこなう可能性があったために、今回の予備実験では実験者が直接デバイスを操作した。センサの変更や、制御アルゴリズムを改善することによって、正確なフィードバックや視線制御が可能になると考えられる。また、現在のAgencyGlassは、正面にコミュニケーションの相手がいることを想定して開発したが、今後複数人対話や、正面ではないところに他者がいるときにも、相手の視線情報をフィードバックすることが出来るように改良していく。また、共同研究として、日本工学院八王子専門学校の中原大介氏との共同研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究成果の一部について、より適切な学会と考えられるISWCへ投稿を行うため、旅費の出費について変更を行った。また、学会HRIにおける発表では、主著者である大澤が別途旅費を負担したため、当研究の予算から支出の必要がなくなった。研究自体の進行については、遅れはない。また、2016年度末に見込まれる研究室の移動に伴い、当研究遂行のために必要な三次元造型機の移動が必要であったが、この移動が2017年度に変更となったため、その予算が次年度使用となった。
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次年度使用額の使用計画 |
三次元造型機の移動を2017年4月に行う予定である。本研究成果の一部の成果については、ウェアラブルコンピューティングに関する会議ISWCへ投稿を行う。
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