研究課題/領域番号 |
16K12486
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
牧野 浩二 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (60560159)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 暗黙知 / 歩容評価 / データサイエンス |
研究実績の概要 |
本研究は、全人工膝置換術後の被介護者と陥入爪のある被介護者の2種類の群を対象として、それぞれに歩容を評価する医師や理学療法士の持つ暗黙知を形式知化し、非侵襲で迅速な歩容評価システムの開発を目的とする。まず、モーショントラッキングのためのカメラシステムを作成し、脚部の可動範囲とその動作速度から数値化を行うシステムを作成した。全人口膝置換術後の被介護者の歩容に関しては、その値と理学療法士の主観的な評価を点数化した結果、相関が低いデータが存在することが明らかとなった。これを調べるためにディスプレイ上の視線を抽出できるアイトラッキングのためのデバイスを用いて、歩容中の理学療法士の着目点の抽出を行った。その結果、脚部のみでなく上半身に着目する時間が歩容全体の50%近くを占めることが明らかとなった。さらに、理学療法士の年数が上がるにつれて上半身に着目する時間が長くなる傾向を確認した。以上より、暗黙知の獲得過程の一端を明らかにすることができた。また、陥入爪のある被介護者の歩容に関しては、健常者と比べて離脚時の足の裏の重心点に偏りがあることが明らかとなった。この偏りは医師が持つ陥入爪患者の歩容の違和感と一致していた。これにより、陥入爪に関する暗黙知の形式知化を達成したとともに、原因の一端の可能性を示すことができた。さらに、指の専門医との話し合いから、指の動作に関する暗黙知の存在が予測され、それを計測するための装置を開発し、暗黙知の形式知化に着手した。その結果、指のしびれと物を把持するときの各指の力の関連性を調べることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
医師や理学療法士の持つ暗黙知の形式知化を行うことができた。計測データの前処理が必要となる手法であるため、リアルタイムに分類する診断システムへの実装はできなかった。しかしながら、暗黙知の獲得過程を数値的に表すことができた。さらに、本手法を応用することで、指に関する暗黙知への応用を示唆することができた。この結果、The Journal of Dermatologyが採録(2018年度投稿)された。また、SI2019で優秀賞を得た。
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今後の研究の推進方策 |
今後進めるべき課題は3点ある。1つは暗黙知の形成過程の形式知化を進める。暗黙知の存在と形式知化はできても獲得の方法を示さなければ、初心者がその暗黙知の獲得を促すことが難しいと閑雅が得られるためである。2つ目は各指の力への応用を進める。手の外科の専門医との話し合いから暗黙知が多く含まれていることが予測され、専門医も暗黙知の存在に肯定的であるためである。3つ目はリアルタイム診断を実現する。これにより、計測直後に診断が表示された内容を専門医が確認し、その差異をフィードバックすることで精度を高めるとともに、新たな暗黙知の形式知化につなげることができると予想される。
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次年度使用額が生じた理由 |
SI2019にて優秀講演賞をいただいた内容をさらに推し進めて、国際学会(IECON2019)へ投稿するため次年度使用額が生じた。 次年度は国際学会への参加費用に使用する。
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