研究課題/領域番号 |
16K12489
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
荒牧 英治 奈良先端科学技術大学院大学, 研究推進機構, 特任准教授 (70401073)
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研究分担者 |
木下 彩栄 京都大学, 医学研究科, 教授 (80321610)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自然言語処理 / 認知症 / アルツハイマー病 |
研究実績の概要 |
認知症患者の日本語の語りから,認知症の障害の度合いを推定する技術を確立した.まず,認知症患者(アルツハイマー病患者)30名の自由発話音声データ(コーパス)を京都大学医学附属病院の協力のもと収集した.コーパスは,生データ(語りの音声)だけでなく,その書き起こしも行った.さらに,コーパス構築後は,語彙量と症状レベルとの関連を調査した.語彙量推定のアルゴリズムは,最も単純なType/Token比から,潜在語彙量推定まで,様々な指標があるが,これらのうちもっとも症状レベルと相関するものを探索し,この結果,潜在語彙量が有望との結果を得た,さらに,語彙量だけでなく,必要に応じて構文の複雑さなど様々な指標を探索し,語彙冗長性という本研究にて新たに開発した指標が認知症の度合いと相関するとの結果を得た.語彙冗長性については新しい尺度であるため,特許申請を行い,さらに,商品化についての議論をメーカと進めている. さらに,本研究により得られる知見や成果は,他の言語と関係した疾患についても有効である可能性が高い.例えば,うつ病,学習障害や失字症などについても,自己モニタリングや早期発見が必要であるとされており,本研究で扱う認知症と,極めて似た状況にある.そこで,語彙量や冗長性などを他の障害や疾患へ応用することも同時に行っている.これについてはまだ予備実験的な段階であるが,東京大学精神科・笠井清登教授やATR田中沙織室長と実験の調整を進めている
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述したように,当初計画していた認知症患者の日本語の語りから,相関係数0.50以上で認知症の障害の度合いを推定する技術は開発でき,特許申請を進めている.また,商品化も進んでおり,研究面では,極めて順調に進呈している. しかし,当初予定していた,英語圏でのデータを収集しているカンザス大Kemper教授との連携(当研究室の日本語コーパスとKemper教授の英語コーパス形式の互換)についてはコンタクトがとれず,座礁している.本来は,この打ち合わせのために,研究代表者ら(2名)が,京都よりカンザス大学を訪問する予定であったが,これについても実行できず,国際連携面での遅延があった. 以上のことから,概ね順調に進展しているものの一部に遅延があると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,開発した症状推定技術を高齢者施設にて常時利用可能なよう設置し,言語能力の測定を可能とする(地域社会へのインストール).すでに,京都市の複合ケア施設「修徳」へは4年前から4回にわたってデータ提供及びプロトタイプツールの試行を行っていただき,十分な連絡体制,信頼関係が築けている.特に,施設の運営・管理を行っているマネージャーの方々には,「(本研究に必要となる)語りを引き出す行為そのものが,認知症の予測のみならず,高齢者の生活の質の向上させる可能性があり,高齢者には受け入れやすい」ものとして,理解をいただいており,実証を進める. さらに,スマートフォン・アプリ化を行い,想定されるユーザ(若年)を含めて通時的なデータが取得可能なようにする(広域社会へのインストール).システムのプロトタイプを図6に示す.これらの試行によって,フェーズIとは桁の異なる大規模データが収集可能となる.これを用いた診断アルゴリズムの探索を行うと同時に,最新のアルゴリズムを随時更新する.なお,集積したデータも今後広く利用可能にするために,アプリケーションの利用規定についても配慮する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度使用予定であった海外研究者の招聘が出来なかったより,若干の資金が余剰した.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度,使用額については,後ろ倒しにした海外研究者の招聘を行い,これを使用する.
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