論文発表未了の結果については定性的に記載する。一部既報分をその由明記し記した。データが十分ある米ドル/日本円、ユーロ/米ドルの分足に関する結果を中心に記す。k分足(k=1~120)をtickデータから作成した。 (1) データ圧縮を試みる中、相対的に大きな圧縮率が得られる条件を得た。 (2) この性質の要因を調べるため、未成約・約定注文のk分足に時系列予測モデルを様々作成・適用し、その性質を調べた。以下、予測可能とはチャンスレベルを有意に越えることとする。(2-1)両注文(以下略)の収益値予測は、符号の予測可能性によりある程度可能であるが、分散が大きく、有意な結果は得られ難い。(2-2)収益の符号が直前の符号の逆である収益反転が予測可能であり、それ以前の符号・収益値が、精度を有意に向上させないことが分かった(一部既報)。テクニカル分析による様々な指標を用いても、精度は有意に向上しなかった。広い範囲のkに関する、すなわちフラクタルな、収益反転の存在を示したユニークな結果である。 (3) 実収益分布の統計的性質を説明する生成モデルの構築を試みた。通貨交換率の分足の収益分布は、株価等と異なり、値が小さい部分(正規化後日本円2銭~15銭相当)は指数分布に近い。これと収益反転を説明するtickモデルの構築に成功した。これは従来の説明と異なり、試行の独立ではなく、過去の試行への依存を用いる説明であり、非常に画期的である。なお、実データ全体に適合するモデル構築は未完である。低頻度・大収益値の現象の説明が、安定分布よりはできているとはいえ、不十分だからである。データ量が不十分であるが検討を続けている。(4) k分足の収益時系列について、収益反転の確率は、条件付き収益反転確率と自明でない綺麗な関係があることを発見した。長期データにより証される性質であり、類似報告のないユニークな結果である。
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