研究課題/領域番号 |
16K12494
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鬼沢 直哉 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (90551557)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ソフトコンピューティング / 確率的演算 |
研究実績の概要 |
大規模な人間的視覚処理ハードウェアを実現するために、本年度は昨年度考案した脳のV1領域での特徴抽出処理(2次元がボールフィルタ)の計算アルゴリズムのハードウェア実装を行った. ストカスティック演算を活用した提案アルゴリズムを,従来2値演算に基づくCORDICを活用したアルゴリズムとの比較をTaiwan Semiconductor Manufacturing Company (TSMC) 65nm CMOSプロセスにおいて行った結果,フィルタサイズの柔軟さを兼ね備えつつ一桁以上のスループットの向上が可能となった.また,提案アルゴリズムではメモリを用いないことから,非動作時のパワーゲーティングが可能となり,従来方式と比較して大幅な静的電力削減も可能となった.この研究成果は2017年9月にベルギーで開催された国際会議ESSCIRC2017(採択率40%程度)に採択となり発表を行った.さらに,次年度実施予定であった2次元がボールフィルタを脳型の物体認識アルゴリズムであるHMAXへの適用も前倒しで行っており,その研究成果はIEEE JETCASへ投稿中である. また,これまで行ってきたストカスティック演算を活用した脳型ハードウェア実装の成果により,解説論文1篇(IEICE Fundamental Review)を執筆,および招待講演2件(第30回回路とシステムワークショップ,5th IEEE GlobalSIP)を行う機会を得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は,予定していた提案アルゴリズムのハードウェア実装(TSMC 65nm CMOSプロセスを利用),および従来方式との性能比較は滞りなく実施することが出来た. さらに,次年度実施予定をしていた人間的視覚処理であるHMAXモデルを,提案のストカスティック演算に基づくガボールフィルタを用いてハードウェア実装する試みは前倒しで行っている段階である.提案アルゴリズムを適用したHMAXモデルのシミュレーションを行った結果,従来2値演算方式と比較して同等の認識性能を示しつつ,大幅な電力削減が可能になる見込みも得られており,当初の計画以上に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度であるH30年度は,今年度前倒しで行っている人間的視覚処理であるHMAXモデルのハードウェア実装を完了させ,従来方式との性能比較を行うことで提案方式の有用性を示す.具体的にはFPGAボードに従来および提案方式のアルゴリズムを実装することで,同環境での性能比較を行う. また,FPGAボードへは前もって学習した重みを保存する必要があるが,学習をハードウェアで行うことは非常に困難である.そのため,学習自体はワークステーションを活用しソフトウェアにより前もって行うことで,物体認識ハードウェアの評価を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
シミュレーション結果のデータ整理などに学生分の人件費を計上していたが,今年度は大規模なシミュレーションではなく,小規模シミュレーションが多かったため,研究代表者自身がすべて行うことが出来た.そのため,人件費・謝金分は計上しなかったため,次年度使用額が生じた. 次年度はワークステーションを用いた大規模シミュレーションを行う予定であるため,次年度分の人件費・謝金分として使用予定である.
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