研究課題/領域番号 |
16K12496
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
三村 和史 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (40353297)
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研究分担者 |
竹内 純一 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (80432871)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 圧縮センシング / ダンピング / 反復再構成法 / スパース重ね合わせ符号 |
研究実績の概要 |
圧縮センシングの訴状法の再構成問題では,理論的に最適な再構成法は,組み合わせ爆発に起因して指数的な計算量が必要になるため,最適な再構成法を多項式時間の反復再構成法で近似的に解くという接近法がとられている.最適な再構成法と全く同じ性能を持つ多項式時間の反復再構成法が発見されたが,適用できる観測方法には強い制約があった.ダンピングの導入には任意性があるため,複数の方法を検討して計算機実験によって有効性を確認している.divergence-free 性を持つ推定量を用いた反復再構成法では,反跳場項がなくても過去の反復履歴による相関をキャンセルすることができる.このような反復再構成法は,強い仮定を導入することで近似的に解析されていた.経路積分法によっても解析を行い,仮定を導入しなくても推定値と真値の平均2乗誤差を1次元の関数によって求められることを示した.類似する数理的な構造を持つ疎結合イジング模型に関して,動的過程から有限温度での定常状態を評価することについて検討を進めた.そのほか,関連する問題群についても検討を進めた.スパース重ね合わせ符号は,圧縮センシングを復号過程に援用したガウス通信路のための誤り訂正符号である.スパース重ね合わせ符号について,実用的な設定の下でベイズ最適AMPアルゴリズムによって復号する方法について検討し,数値シミュレーションによって先行研究に比して高い伝送レートのもとで復号できる手法を示した.また,スパース重ね合わせ符号の重要な要素である辞書を,通常のガウス辞書よりも実用性の高い二元辞書に変更した場合に,L0再構成の手法による復号器の性能を評価し,従来より精密な性能保証を与えた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,divergence-free性を持つ推定量を導入した反復再構成法の解析を行った.これにより,ダンピングによって生じる複雑な反復履歴を持つ反復再構成法に関する基礎的な解析手法が得られた.この結果によって,divergence-free性を持つ推定量を導入した反復再構成法に関して,ダンピングが収束するための必要十分条件が求められることが期待される.基礎的で数理的に類似した構造をもつ数理も系である疎結合イジング模型についても,その動的過程を経路積分法によって解析し,その結果から零温度での定常状態を取り出す解析手法を既に得ており,有限温度での定常状態解析手法も検討を進めている.また,関連する応用例となる問題群に対して,理論と実験の両面から検討を進めている.これらの知見を用いて,反復再構成法のひとつであるISTについて,divergence-free性を導入して,ダンピングをした場合の解析に着手している.応用として重要なスパース重ね合わせ符号についても,実用的な設定の下で高い伝送レートのもとで復号できる手法を示したほか,スパース重ね合わせ符号の重要な要素となる辞書を,実用性の高い二元辞書に変更した場合に,L0再構成の手法による復号器の性能を評価し,従来より精密な性能保証を与えるなど,実証と解析の両面から重要な結果を得た.以上の理由により,基礎的な検討事項を追加したり,順序を変更したものの,概ね順調に進展しているものと判断している.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,反復の収束条件として弱長距離記憶性を用いた議論を進める.そのほか,今年度に解析した手法を用いて,divergence-free性を持つ推定量を導入したダンピング付きの反復再構成法の解析を進める.divergence-free性を持つ反復再構成法の解析が1次元関数の反復によって,正確に推定過程を表現できるとき,収束のための必要十分条件を得られることが期待される.また,基礎的で数理的に類似した構造をもつ数理も系である疎結合イジング模型の有限温度での定常状態解析手法も解析を進め,より多方面からこの問題へと接近して,より一般的な収束条件について検討を進める.divergence-free性は,L1再構成に基づく反復再構成法にもベイズ最適な反復再構成法にも適用できるものであり,様々な反復再構成法へダンピングを導入した場合についても展開する.また,応用として,スパース重ね合わせ符号について効率のよい復号アルゴリズムの開発とその解析を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
基礎的な検討事項を追加したため,論文の投稿費用や国際会議での発表費用などで次年度に必要となったものがあるために次年度使用額が生じた.論文の投稿費用または国際会議での発表費用として使用することをなどを計画している.
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