本研究では、上衣と下衣の直感的な対比印象の度合いは無地・柄に関わらず1次元的な尺度化ができるのではないかと考え、これを「コントラスト・インパクト」と呼び、その定量化を試みている。 H28-29年度研究で用いたテスト刺激は、下衣は黒無地に限定され,上衣のパターンは統一されていなかったので、H30年度では新たなテスト刺激として4種の明度の無地(白、明るい灰色、暗い灰色、黒)を用いた下衣と、同じパターンで柄の大きさが異なる上衣,同じ柄で色の異なる上衣を作成した。それらを組合せた28種類の組み合わせにおいて,上衣と下衣の対比印象の強さ(コントラスト・インパクト)を、対比刺激として様々な無彩色上衣下衣組み合わせと一対比較し、対比印象強度が等価となる対比刺激の明度比を基に尺度化した。同時に6種の評価語(明るい/目立つ/落ち着いた/地味な/かわいい/清楚な) について7段階での主観評価による感性評価実験を行った。実験は生活科学系の女子学生5名,工学系の女子学生5名の計10名に対して実施したが、両群からは極めて近い結果が得られた。評価実験実施環境において、各テスト刺激の輝度・色度を2次元色彩輝度計で測定した。 対比刺激の明度に適当な係数を乗じて導出したコントラスト・インパクトにより,対比印象の強さを定量化できた.上衣の柄の大きさや無彩色,有彩色の違いにより,コントラスト・インパクトとの関係傾向に違いが見られた.無彩色の組合せでは「明るい」「目立つ」と強い正の,「落ち着いた」「地味な」と強い負の相関が見られた.一方、有彩色を含む組合せでは「かわいい」「清楚な」「明るい」と強い負の相関が見られた。特に白い下衣が「かわいい」「明るい」には強く寄与する特徴があった。無彩色・有彩色及びパターンサイズも含めて統一的に説明するためにはさらなる検討が必要である.
|