研究課題/領域番号 |
16K12508
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤井 雅史 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (30725750)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 情報伝達 / small-volume effect / robustness / sensitivity / efficiency |
研究実績の概要 |
神経細胞間のスパイクタイミング情報を処理する場であるスパインは体積が小さい(0.1fL程度)ため、場に含まれる分子の数が少ない。そのため、生化学反応過程でのゆらぎによって応答がゆらいでしまう。一方、スパインは神経細胞間の情報伝達の入り口としての側面も持つ。情報伝達においてゆらぎ(ノイズ)は、正確な情報伝達を妨げるものであると考えられるため、一見するとゆらぎの大きいスパインでの情報コードは効率が悪いように考えられる。本研究ではスパインにおけるmGluRを介したCa2+上昇反応の反応過程を確率論的シミュレーションとシャノンの情報理論に基づいた解析によって、スパインの小ささが、入力強度のゆらぎに対する頑健性、小さな入力に対する高感受性、1入力分子が担える情報の高効率性が実現されることを1年目に見出してきた。しかし、これらの情報伝達における小ささの利点が、mGluRを介したCa2+上昇反応で得られた系以外でも見られるかは不明である。そこで本年度では、mGluR以外での受容体(NMDAR)を介したスパインでのCa2+上昇反応について考察し、さらにスパイン以外の系についても着手した。これらの成果は、日本生物物理学会誌「生物物理」の「トピックス」で発表した(藤井ら、生物物理 57、305-308(2017)、DOI: 10.2142/biophys.57.305)ほか、日本生物物理学会でのシンポジウムでの招待講演などの場で発表を行った。また、NMDARを介した系については成果をまとめて現在国際学術雑誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、シンプルモデルを用いた系と複雑なモデルを用いた系の研究の順序を入れ替えたが、そのおかげで小さな反応場でのゆらぎを利用した情報コードの普遍的なメカニズムを明らかにしつつあり、成果も十分出てきていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度については、当初の計画通り、より一般的な系における情報コードのメカニズムと特性についてまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ保存用のHDDにまだ余裕があるが、今後最終年度の複数の系での研究において必要になるため、最終年度に繰り越し、HDDを購入する。
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