研究課題
神経細胞間のスパイクタイミング情報を処理する場であるスパインは体積が小さい(0.1fL程度)ため、場に含まれる分子の数が少ない。そのため、生化学反応過程でのゆらぎによって応答がゆらいでしまう。一方、スパインは神経細胞間の情報伝達の入り口としての側面も持つ。情報伝達においてゆらぎ(ノイズ)は、正確な情報伝達を妨げるものであると考えられるため、一見するとゆらぎの大きいスパインでの情報コードは効率が悪いように考えられる。本研究では、スパインにおけるmGluRを介したCa2+上昇反応の反応過程を確率論的シミュレーションとシャノンの情報理論に基づいた解析によって、スパインの小ささが、入力強度のゆらぎに対する頑健性、小さな入力に対する高感受性、1入力分子が担える情報の高効率性が実現されることを見出してきた。一方で、これらの性質の一般性については不明のままである。そこで本年度では、mGluR以外での受容体(NMDAR)を介したスパインでのCa2+上昇反応について考察した。その結果、入力強度のゆらぎに対する頑健性と1入力分子が担える情報の高効率性が実現されることを見出した。これらの成果をまとめた論文について、Biophysical Journalへの掲載が決まった。さらに、より一般性の高い抽象的なモデルを用いた解析を進め、上記頑健性が現れる条件・現れない条件を見出した。これらの成果は現在論文にまとめているところである。
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Biophysical Journal
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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