研究課題/領域番号 |
16K12510
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
野村 収作 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (80362911)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 感性情報学 / ヴァーチャルリアリティ / 生体情報 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、人間の生体情報(心拍数、呼吸、体温、皮膚電気活動、脳波など)をフィードバックしたヴァーチャルリアリティを実装し、それが人間の生理および心理に及ぼす影響について実験的に検証するものである。具体的には、人間の心拍数に同調してヴァーチャルリアリティ空間内に配置されたオブジェクト(例えばボールや動植物)がリズミカルな運動をするようなフィードバック空間を構築する。 赤子に母親の心音を聞かせること落ち着くことが知られているように、人間の生体が発するリズムは、人間の耳には聞こえないものの(周波数帯が可聴域より低い)人にポジティブな効能をもたらすという報告がある。従来の研究では、生体“リズム”を反映するという ことから、また技術的な制約により生体情報を音楽や音刺激の形式でユーザーにフィードバックする研究が行われてきた。また、その効能については肯定的また否定的な報告が混在するため現在でも統一的な理解に乏しい。 これに対し、本研究では人間の視覚に対して生体情報をフィードバックするものである。近年、ヘッドトラック機能を有するヴァーチャルリアリティ装置が上市され、ビデオボードなどのハードウェア性能の向上もともない、その利用は拡大の一歩をたどっている。 本研究では、人間の生体情報が反映された世界、というこれまで人類が経験したことの無い新しい世界をヴァーチャルリアリティにより構築し、その生理・心理的影響について科学的に検証するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで、人間の生体情報(心拍数、呼吸、体温、皮膚電気活動、脳波など)をリアルタイにヴァーチャルリアリティ空間にフィードバックする装置について構築できた。この装置は、生体情報をセンシングし、それをヴァーチャルリアリティ内のオブジェクトの動作に反映させるものである。 具体的には、各種アナログセンサー(もしくは市販の生体アンプ)を用いて、人間の生体情報を取得し、DACを経由してデジタル化してPCに送る。PCに送られた情報は自作したAPIにより映像コンテンツを動作させるためのゲームエンジンにデータを引き継ぎ、このゲームエンジンによって作成されたヴァーチャルリアリティ空間に反映させるものである。ハイエンドのPCを用いることで、ユーザーが時間遅れを感じることなく、自身の生体情報がリアルタイムに反映されたヴァーチャルリアリティ空間を実装できた。 この機構により、例えば、魚の群れを呼吸に同調させて回遊させるコンテンツ、心拍数に同調させた打ち上げ花火のコンテンツ、など現実世界をなぞらえたもの、あるいはヴァーチャルリアリティ空間自体が呼吸に同調して広くなったり狭くなったりするような現実世界とは異なる表現を含むコンテンツなどを作成した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は前年度に実装された、生体情報を反映するヴァーチャルリアリティ装置により、それが人間の生理および心理に及ぼす影響について実験的に検証を行う。特に、生体情報をフィードバックした空間がもたらすリラックス効果について着目し、リラックス効果をもたらすようなフィードバックの形式あるいはコンテンツについて調査する。また、リアルタイムでフィードバックさせるだけでなく、あえて時間遅れを伴うような制御をすることでその生理・心理効果がどの様に異なるのかについて検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
構築した生体情報フィードバックシステムに係る生理評価実験を次年度に延期することとしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
生体情報フィードバックシステムに係る生理評価実験に係る謝金および消耗品
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