自己帰属感を高めるために触覚提示を視聴環境に融合し,クライシス型映像コンテンツ視聴時の恐怖感覚の人工的増幅の試みとして,虚偽の心拍でVRのウォークスルーコンテンツを体験している間に自身の実際の心拍よりも徐々に振動触覚の拍動の周期を早くした振動触覚刺激を呈示し,心拍を早めることで恐さを増幅させ,クライシス型コンテンツ視聴体験に情動を加える試みを行った.展示形式で一般公開し心拍の上昇と恐さの関係について実践的に評価を行い分析したところ,制作したコンテンツで103名の体験者の体験開始時の平均心拍と比較し体験終了時に118%上昇し,体験後のアンケート結果より体験者の68%が体験が恐かったと回答した.一般公開の展示であるため,比較実験等行っておらず本結果から虚偽の心拍が主観的な恐怖の感じ方に影響を与えたと結論づけることはできないが,体験者の自由回答で,心拍を模した振動触覚の印象についてのコメントもあり,コンテンツの一部として体験者に印象に残る程度の影響を与えたことから,少なくとも視聴コンテンツの文脈に沿った虚偽心拍の呈示はより体験記憶を強化させる傾向にあることが示唆された. また,虚偽の呼吸リズムの提示手法を検討するため,ユーザーへの計測負荷の低い装着型の呼吸センサーで計測した呼吸リズムにあわせ腹部へ触覚刺激を呈示するシステムの試作を行った.具体的には呼気時に圧縮空気を充填し,吸気時に圧縮空気を放出する小型エアーポンプに接続された空気袋を腹部へ配置し呼吸リズムにあわせ触覚刺激の呈示を行う仕組みとした.虚偽心拍が主観的恐怖を増幅する効果について虚偽心拍呈示手法と展示の体験を論文にまとめ評価した(論文は投稿中のため業績欄不記載).
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