研究課題/領域番号 |
16K12516
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研究機関 | 函館短期大学 |
研究代表者 |
木村 美佐子 函館短期大学, 保育学科, 准教授(移行) (20557988)
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研究分担者 |
植月 美希 青山学院女子短期大学, その他部局等, 准教授 (70431781)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 感性的評価 / 自分らしさの投影 / 類似性 / 人形 / 作り手 |
研究実績の概要 |
本研究では、作り手が作品に投影する自分らしさと、他者がそれを感性的に評価するメカニズムを検討する。これまでの研究から、人間には自分に類似したものを選好する心理的メカニズムがあり、これは人が人形を作る際にも作用することが明らかとなっている。しかし、作品に投影される作り手らしさがどのようなものであり、また、他者はどの情報に基づいて、作り手に関する感性的評価を行っているのかは明らかではない。そこで本研究では、人形のように顔のある作品と、風景画や抽象的な彫刻等の顔のない作品を用いて、作品に投影される作り手の自分らしさはどのようなものか、そして、他者はどの情報に基づいて感性的評価を行い、作り手について判断しているのかを明らかにする。 研究初年度に当たる平成28年度は、作り手が顔のある作品のどこに自分らしさを投影しているかを検討した。具体的には、顔のパーツやその配置等の物理的類似性に基づいて類似性判断を行っている可能性を検討するため、作り手の正面と人形の後姿を刺激として実験を行った。作り手正面と人形正面、作り手正面と人形後姿の2条件の質問紙を作成し、作り手と人形の正しいペア群、誤ったペア群のどちらが類似性が高いと感じるか二肢強制選択法で実験参加者に回答を求めた。その結果、作り手正面と人形正面条件、作り手正面と人形後姿条件共に、正しいペア群の類似性が高いと回答した割合が有意に高い結果となった。人形の後姿の情報のみであっても作り手と人形の類似性判断が可能であることから、類似性判断は、必ずしも顔のパーツの物理的な類似性に基づいて行われているわけではないことが明らかとなった。このことから、実験刺激から受ける印象等に基づいて判断している可能性も考えられる。そこで次に、性格特性を手がかりに人形と作り手の類似性判断をしているかを検討した。その結果は、平成29年日本心理学会で発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は①作り手が人形のどの部分や情報に自分らしさ投影しているか、②実験参加者が作り手と人形に関してどのような感性的評価を行っているかを明らかにすることを計画していた。 ①に関しては実験参加者に質問紙調査を行い、その結果を国際心理学会(ICP)において発表した。 ②に関しては、実験参加者にSD法による質問紙調査を行い、データ分析を終えている。この結果は平成29年日本心理学会にて発表予定である。 このことから、研究の進捗状況は概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は研究計画に従い、①風景画や抽象的な彫刻のように作り手と外見的類似性の低い作品に作り手が自分らしさを投影しているのかを実験心理学的手法により検討する。そのため、実験刺激となる作品・作り手の収集を行い、質問紙を作成する。その後、前年度と同様の手続きで実験を行う。 また、②実験参加者が作り手と外見的類似性の低い作品に関してどのような感性的評価を行うかをSD法によって検討し、これらの評価が類似性判断に及ぼす影響を明らかにする。 ①において、作り手と外見的類似性の低い作品に作り手が自分らしさを投影していることが明らかとなった場合は、さらにどの領域や情報に自分らしさを投影しているのかをさらに検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は順調に研究が進行し、備品等の購入も予定より安価に抑えられたことから、次年度に計画していた実験刺激収集のための名古屋出張を予定し、予算を確保していた。しかし、年度末になり、実験協力者との日程調整が出来なかったことから出張を中止した。そのために余剰金が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
上述の余剰の研究費に関しては、次年度実験刺激収集のための出張費(名古屋)等に充当し、研究を進める予定である。
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