タンパク質は他のタンパク質との相互作用を通じて機能を発現する。タンパク質間相互作用は疎水性相互作用と親水性相互作用に分けられるが、最新のバイオインフォマティクス解析などの結果によれば、生体内では親水性相互作用の場合が多いことが示されている。それゆえ、本研究では親水性タンパク質間相互作用に焦点を当てる。 一般に、タンパク質間相互作用はencounter complex形成までの過程とその後の安定会合体形成までの2段階に分けられる。本研究では、それぞれの段階でどのような力が駆動力になっているのかを解明することを目的としている。前者では遠達力が働くことになるが、その起源が何であるかが興味の焦点となる。後者では、会合の駆動力と脱水和のペナルティを打ち消すメカニズムが興味の対象である。 1)全年度で得たマルトーストランスポーターのinward-facingからoccluded構造への構造変化のMDトラジェクトリーから2つのMalK部分(2つのNBDに相当)のみのトラジェクトリーをピックアップした。 2)2つのMalKドメイン間の相互作用を重心間距離の関数として求めた。その際相互作用は、ドメイン間の直接相互作用(静電相互作用およびファンデルワールス相互作用)と水を媒介とした間接相互作用に分割した。前者はMM計算、後者は3D-RISM計算より求めた。特に、後者については水和自由エネルギー、水和エンタルピーと水和エントロピーの寄与を明確にした。 3)以上の計算結果より、encounter complex形成までの遠達力とそれ以降の安定複合体系性までの駆動力を明らかにした。すなわち、遠達力の起源は水和エンタルピーであり、近距離での引力の起源は水和エントロピーであることを明らかにした。
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