研究課題/領域番号 |
16K12521
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
瀧ノ上 正浩 東京工業大学, 情報理工学院, 准教授 (20511249)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 分子ロボット / DNAナノテクノロジー / 自己組織化 / 人工細胞 / ピッカリングエマルション / 油中水滴 / カプセル / マイクロ流路 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,生命システムに見られるような,動的な自己組織化分子システムを設計・創製・制御するための革新的な技術の創出を目指すことである.具体的には,DNAナノ構造によるボトムアップ型の分子機能制御とマイクロ流体工学によるトップダウン型の流体界面制御により,機能性のDNA分子ナノデバイスをマイクロスケールに自己組織化させた「プログラマブルで動的な細胞型分子ロボット」の創製と制御を目指す.この分子ロボットの機能は,DNA塩基配列の設計によりプログラマブルである.DNA分子計算反応による高度な分子情報処理に加え,ソフトマターとしてのDNAの特性により,環境応答・変形など動的な性質も持つ. 今年度の研究の結果,DNAオリガミ技術によって構築したDNAナノプレートを構築してAFM観察・電気泳動観察等によって物理化学特性の検証ができた.作製したDNAナノプレートに疎水性分子コレステロールを結合させてDNAナノプレートの両親媒性化にも成功した.両親媒性のDNAナノプレートの作製と比較的高効率な回収手法の確立に成功し,それを用いて,油中水滴(ミネラルオイル中のマイクロ水滴)を安定化させることができることを実証した.界面張力測定によって,安定化の動的プロセスも確認できた.また,両親媒性化のために利用しているコレステロール分子数に依存して定量的に両親媒性の強さが増すことも確認した.さらに,界面に集積しているDNAナノプレートの界面上での動きやすさを,蛍光退色後回復測定法により調べたところ,動きがあまり見られず,しっかりと界面に集積していることも分かった.このように,DNAによる細胞型分子ロボット構築の基礎的な知見が多く得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,DNAを用いた細胞サイズのカプセル(細胞型分子ロボット)構築のための基礎的な知見が多く得られており,計画はおおむね順調に進展していると考えられる.具体的には,DNAナノプレートによる,油中水滴カプセルの安定化が実現され,定量的な指標で物理化学的な特性を評価できているため,今後の設計指針や改良指針に十分なだけの知見が得られている.これをベースに動的な特性を付与していくことが今後可能になっていると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は,細胞サイズの構造を持ち,外界を認識し情報処理や運動等の動的な挙動を示す,自己組織化システムである,細胞型分子ロボットの構築を目指している.現在までに,静的な構造の構築ができつつあるところであり,今後は,動的な挙動を付与していく段階に入る.具体的には,膜に機能を持たせて,外界の情報をセンシングする分子システムを作製し,膜に付与することや,細胞サイズのカプセル内で,分子的な情報処理(DNAコンピューティングなど)を実行する仕組みを付与したりする.そのためDNA塩基配列の設計等をさらに進める.また,静的な構造形成に関しても,動的な自己組織化が重要になる可能性があり,そのような新しい物理現象に関しても探求していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度研究において新たな発見を含む大きな進展があり,これをさらに進めることで,当初計画した研究を遂行することができるだけでなく,科学的に重要な成果が得られるため.また,来年度,これを更に進めるためには,実験消耗品やその他経費が必要となるが,当初計画を効率的・効果的に進めた結果,直接経費を節約できたので,その分を利用して,当初計画の研究を発展させる.
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次年度使用額の使用計画 |
今年度新たに発見された知見をさらに発展させ,当初計画をさらに迅速に遂行するために,計測機器の購入や実験消耗品類の購入に充てる.
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