研究課題/領域番号 |
16K12522
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
浅沼 浩之 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (20282577)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 論理回路 / DNA / 直交性 / PNA / 人工核酸 |
研究実績の概要 |
互いにキラルな関係にある分子同士は一般的に互いに干渉しない“直交性”を有している。D-リボースを骨格に持つ天然のD-DNAと、そのエナンチオマーであるL-DNAは、配列が互いに相補的であっても二重鎖形成しない。しかしアキラルな分子にとってD体とL体は完全に等価であり、例えばアキラルな人工核酸PNAは、D体L体どちらとも二重鎖形成する。そこで、D体あるいはL体のDNA(D-aTNA)のみで論理回路をそれぞれ設計し、アキラルなPNAをインターフェースに用いて、D体が入力するとL体の回路が作動する仕組みを設計する。このように本来直交している二つの論理回路を、インターフェースを通じて通信させるシステムを構築する。本年は、まずWinfreeらが開発したSeesaw GateをD-DNAとL-DNAで設計し、PNAをインターフェースに使用した論理回路を設計した。D-DNAとL-DNAそれぞれの論理回路は、D-DNAおよびL-DNA入力で問題なく作動した。そこでPNA/L-DNA二重鎖をインターフェースに用い、D-DNA入力でToehold exchangeによるL-DNAの出力を目論んだが、濃度など条件を最適化しても、Toehold exchange反応はほとんど起きなかった。すなわちPNAはToehold exchange型のインターフェースとして適していないことが示唆された。そこでインターフェースをPNAからSNAに変えたところ、期待通りToehold exchangeが起こり、L-DNAの論理回路が作動した。このようにインターフェースとしてはPNAよりも我々が開発した人工核酸SNAが適していることが判明した。また、我々の開発したD-aTNAとD-DNAが直交していることを利用して、SNAをインターフェースに用いてD-RNA入力でD-aTNA回路が作動することも確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画ではPNAをインターフェースに用いていたが、残念ながらToehold exchange反応が起きにくいため機能しないことが分かった。しかし大変興味深いことに、我々が設計したSNAがインターフェースとして機能することが判明した。結果としてPNAの代わりにSNAを用いることで計画通り進めることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
当初はPNAをインターフェースに用いる計画を立てていたが、PNAの代わりにSNAを用いる計画にすべて修正する。それに伴い、D-DNAおよびL-DNAの論理回路の配列設計もSNAに合わせて修正する。すなわち、D-DNA入力→SNAインタフェース→L-DNA出力→L-DNA回路の活性化 というプロセスに修正する。なお、我々が開発した人工核酸D-aTNAもSNAをインターフェースに用いてDNAと通信できることが判明したので、D-DNAとD-aTNAの組み合わせも同様に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初はPNAをインターフェースに使用するつもりだったが、PNAが機能しなかった。その原因究明を優先し、D-DNAよりも100倍近く高価なL-DNAを用いた論理回路合成を行わなかった。そのため当初の計画より予算の使用が大幅に減った。
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次年度使用額の使用計画 |
SNAがインターフェースとして機能することが判明したので、当初の計画に戻ってL-DNAを使用した論理回路を設計するため、高価なL-DNAモノマーの購入に充てる。
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