研究課題/領域番号 |
16K12527
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研究機関 | 公立はこだて未来大学 |
研究代表者 |
加藤 浩仁 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 准教授 (30273874)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脊柱側弯症 / 有限要素法 / 胸郭変形 / 呼吸運動 |
研究実績の概要 |
当該年度の研究実施計画は,脊柱側弯症の体幹形状を用いて,側弯症患者と健常者との比較を行うシステムの構築を行うことである.そこで,深度センサとしてMicrosoft社製のKinect V2を用い,システムを構築した. システムとして,被験者の前後にそれぞれセンサを設置し,1/10秒ごとに胸部を中心とした深度データ及び画像データを獲得する.ここで,前後別々にデータを確保するため,キャリブレーションが必要となるが,2台のセンサの中心にキャリブレーション用の板を設置し,行っている. 次にここから得られた深度データを頭側から尾側に向かって,一定間隔でスライスし,輪切り状のデータを作成する.ここで得られた輪切り上のデータに対し,楕円近似を行い,長径と短径の軸を計算し,捩れ角を求めた.この結果,明らかに,健常者と比較し,側弯症患者の捩れが大きいことが検出できた.また,時間軸方向で解析するとで,呼吸動作に伴い,側弯症患者の捩れが変化することが確認できた.健常者の場合は,ほとんど捩れ角に変化は現れず,この捩れ角を比較することで,側弯症の評価が行えることが分かった. 次に,次年度の計画の一部である,有限要素法を用いて肋骨及び脊椎の力学的解析を行った.まずは,1対の肋骨及び脊椎,次に最も側弯角の大きい部位の3対の肋骨及び脊柱を用いて,解析を行った.その結果,1対のデータからは,脊椎の捩れ,3対のデータからは,側弯角の進行の要因に関する解析を行うことができた. これらの結果から,脊柱側弯症の進行の原因として,従来の生物学的な成長による変形だけでなく,呼吸動作がその要因の一つであると推測された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,健常者及び脊柱側弯症の患者の1対の肋骨及び脊椎の力学的解析を行い,それぞれにかかる応力分布や変形の解析を行った.さらに,側弯症患者のCT画像から作成された肋骨及び脊椎を獲得し,有限要素法による解析を行った. ここで,1対の解析ではできなかった,脊椎の側弯角の進行に関する評価が行えることが分かった.実験では,側弯変形が最も大きい,3対の肋骨及び脊椎に対し解析を行った.この解析から,実際に側弯角を進行させる力が働いていることが分かった. 当初,3対の解析を行うことを目標としていたが,実際に達成され,1対では解析できなかった側弯角を強める現象に対しても,結果が得ることができた. 現在は,この結果をまとめて,論文の執筆を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
現在は,収集した側弯症患者のデータが.1例であり,解析結果の信頼性を上げる上でも,より多くの被験者を集める必要がある.さらに,収集したデータより,側弯角やCobb角との関係を評価する必要がある.これは,現在,この関係性を評価した研究はなく,側弯症の進行とその後の変形予測をする上で,非常に有用だからである. そのために,昨年度購入したコンピュータを利用し,昨年度と同様に解析を行っていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進行が,当初の計画より早く進めることができたため,次年度の研究を前倒し請求し,実験機器の購入や旅費として使用した.その結果,全てを使用できず,残額が発生した.
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次年度使用額の使用計画 |
本来,次年度に使用予定であったため,当初の計画通り,機器の購入や旅費として使用する予定である.
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