研究課題
これまでに,特定の地域の住民のみが参加する地域SNSをはじめとする,SNSによる地域内でのコミュニケーションの促進が地方自治体やNPO主導のもとで盛んに行われてきた.しかし,これらのSNSはTwitterやFacebook,Lineなどの既存のSNSと同様に明示的な人間関係のみしか扱うことができない.一方で,我々が生活する地域社会では人々は多くの場合,明示的な人間関係だけでなく,暗黙的な人間関係も構成されている.暗黙的な人間関係とは,本人が意識しないうちに,実空間のモノや場所に対する行動を通じて影響を他者に与えたり,あるいは他者から受けたりすることで構成される関係性である.我々は,現在議論が進められているソーシャル・キャピタルの概念に基づいて,暗黙的な関係性を持つ人々が相互に互いに気づき,それに価値を感じられることが,人々の地域に対する安心・安全感に重要であり,ひいては地域の協働を支援することにつながるのではないかと期待している.本研究では,このように人々がお互いの関係性を知ることで互いに有益となるような関係性を,利益的社会関係と呼ぶ.本論文では,清掃活動等の地域貢献活動によって発生する「貢献者 / 受益者」という利益的社会関係を検出し,この関係に基づいて相互の立場の人々が有益と感じられる情報を送信するSNSを提案する.そして,提案するSNSが情報を配信する際に問題となる論点を摘示する.我々はこれらの論点に基づき貢献者及び受益者に対する情報配信のアプローチを提案したうえで,実装したプロトタイプシステムを用いた被験者実験を行った.実験の結果,貢献者及び受益者に対してそれぞれ受信した情報に有益性や主観的な嬉しさを感じる傾向が得られた.これは,情報配信手法の有効性を示唆するものであり,我々が提案するSNSの実現可能性が示された.
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Proceedings of the 12th International Conference on Ubiquitous Information Management and Communication
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第10回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム論文集
Proc. of Twelfth International Conference on Digital Information Management
10.1109/ICDIM.2017.8244681
10.1109/ICDIM.2017.8244679