研究課題/領域番号 |
16K12540
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
中根 一朗 神奈川工科大学, 工学部, 准教授 (30221451)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 交通流 / 交通渋滞 / 追従挙動モデル / モデル化 / 数値シミュレーション / 非線形力学 / 環境工学 |
研究実績の概要 |
交通渋滞の発生は、CO2の排出増加と化石燃料消費に直結するため、局地の経済損失にとどまらず、地球規模の環境問題とも言える。そこで本研究では、物理モデルを用いたシミュレーションを中心とした交通流予測システムを開発することで、このような渋滞問題の解決を目指している。 特に本申請課題においては、この予測システムの核をなす交通流物理モデルを作成することを目的としており、そのポイントは、高速道路交通流を実用レベルで予測できるモデルとすることである。従って、実用性を担保するため、定点計測された動画を解析・評価することによりモデルを作成する。 ここで、動画解析において問題となるのが解析ソフトであり、これまで、解析には甚大な労力を要していた。そこで、研究計画に則り、H28年度において、市販の動画解析ソフト(DIPP-Motion V/3D)にマクロを組み込むことで動画解析の効率を飛躍的に向上させた。そして、これにより首都高3号線赤坂付近を撮影した動画を解析し、以下の知見等を得ている。また現在、これを反映させた物理モデルを作成中である。 1.自由走行時に、“車間距離-自車速度”の相関が低いことと、車間距離に関わらず一定速度で自車が走行することは、本申請以前に明らかにされていた。これに加え、H28年度の動画解析から、渋滞時、ならびに自由走行から渋滞に移行する状態においても、同様に上記の相関が低く、ランダムに近い分布となることが分かった。これは、ドライバーが前方での渋滞の発生を認識した場合に、どの程度の車間距離においてどの程度減速するかが、まちまちであるためと推察される。ただし、自由走行時とは異なり、これらの状態では、混雑の度合いに応じて自車速度は遅くなっている。 2.これに対して渋滞から自由走行への移行においては、上記とは異なり、前車の挙動に自車が瞬時に反応し、“車間距離-自車速度”の相関は高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度においては、前記の通り、首都高速道路3号線赤坂付近の動画像解析を行い、ある程度の知見を得ている。ただし、長時間録画された動画から解析対象を切り出す際に連続性を欠いた部分があり、これまでに得られている知見との矛盾点(増速過程の平均速度が減速過程の平均速度よりも速い)がある。このため、現在、この不連続部分を補間する解析も行っている。従って、当初研究計画では、H28年度内に完結する予定であった上記動画の解析を、一部分とは言え、H29年度も継続する必要があることから、上記の通りに判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初、H29年度は、定点計測動画の解析とともに、特に“追い越し時の挙動”を計測するため、走行している車両からの移動計測も行う予定であった。またこのため、中古車両を購入し、これに種々の計測機を取り付けることとしていた。そこで、H28年度よりこの準備も始めたが、最近の動画像の高画質化、高速化と、周辺機器や解析ソフトの高画質動画への適用が進んだことから、場合によっては定点動画計測の方が、車速パルス、レーザ距離計、GPS等を用いた移動計測よりも、より高精度に“自車両と追い越す車両との車間距離、速度差”等を算出できることが分かった。従って当初計画を変更し、追い越し時の挙動も定点動画により計測することとする。つまり、H29年度は、H28年度と同様に、撮りためた動画の解析を行うとともに、追い越し挙動にも焦点を当てた動画計測とその解析を行う予定である。このため、現在、首都高3号線渋谷付近を計測候補地として調査中である。 ここで、既に場所の異なる4パターンの撮りためた動画が有るにも関わらず、H29年度も撮影を続けるのは、交通流が、道路の混雑状況、天候、昼夜の時間等の影響を受けるため、各動画の解析結果が、特定の限られた条件下での結果となっている可能性が高いためである。つまり、普遍性、一般性のある結果を導くためには、様々な状況下での計測結果を統合する必要があるとの判断である。 また、H28年度、H29年度、そしてH30年度も同様であるが、解析結果が得られるたびに、その結果を交通流物理モデルに反映させることでモデルを完成させる予定である。よって、現在、H28年度の計測結果を基にして、特に渋滞解消時の挙動が計測結果に整合するようにモデル化を進めている。 なお、交付申請書にも記した通り、物理モデルを最終的に完成させることと、これを用いたシミュレーションは、主にH30年度に実施する予定である。
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