大学等の高等教育機関では,メンタル面の不調が原因で修学が困難になっている学生を発見し,該当者へコンタクトして原因を把握し指導やアドバイスを行っている.しかし,問題の発見時点では既に困難の除去が難しいケースが少なくない.この問題に対し,本研究はIoT/M2Mサービスとサービスコンピューティング技術を組合せ,学生の日常的な活動空間をモニタリングすることで問題発生の手がかりを獲得し,修学上の困難に陥ることが予測される学生を早期にスクリーニングし適切な指導や医療的介入に結びつけることを目的としている. 本年度は,生活環境からの抽出FACTを仮説とし,既存データからのスクリーニングでどの程度の予兆推定が可能かを検証した.発展的にセンサセットの多角的利用により,センシングデータを視覚化し学生間で共有する効果を検証する共に,新たに修学支援エージェントの効果も試行した.FACTを利用した検証では,センシングデータからFACTの存在を見出せないにもかかわらず成績不振であるケースの発見により,問題の背景別に一定レベルで分離予測可能であることがわかった.困難の原因がメンタル面の不調に起因するケースとそれ以外のケース(サークル活動への傾注,アルバイト過多,勉学についていけない等)を一定レベルで分離可能にし,指導的介入により改善できるケースと医療的介入を要するケースとを分離する手段として,センサセットが有益に寄与できることがわかった.これにより,これまでの成績のみでのスクリーニングでは把握できない背景情報を,センシングデータから捕捉できることが明らかになった,研究室配属後の学生では,前年度に試行したセンサ情報の共有というコミュニティ効果を組合せる方法に加え,対話エージェントによる修学意欲の維持促進の方法等,スマート環境の高度化を図ることで学生の修学環境を良好に維持するための方策の効果を明らかにした.
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