研究課題/領域番号 |
16K12554
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
齊藤 忠彦 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (10313818)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ボーカロイド / デジタル教科書 |
研究実績の概要 |
ボーカロイドは,学校外の音楽シーンでは若者を中心に普及し,社会現象ともなっている新しい音楽文化である。本研究では,このボーカロイドを学校内の音楽シーンへも取り入れることはできないかという着想をもとに,音楽デジタル教科書へのボーカロイドの組み込みの可能性を探り,教育効果が期待できる具体的な学習コンテンツを提案することを研究の目的とする。音楽デジタル教科書は,平成24年度に中学校版<指導者用>,平成27年度には小学校版<指導者用>が発売され,教育現場で使われ始めた段階である。学習者用の音楽デジタル教科書はまだ発売されていない。平成28年度は,音楽デジタル教科書の実態を把握し,実際に音が出る楽譜の提示や,鑑賞指導の場面での動画再生,そして創作指導で音を選択して再生する等の場面で利用されていることがわかった。一方,ボーカロイドの特徴も把握し,ボーカロイドでできること,できないことを明らかにした。入力は感覚的にできるが,五線譜への対応はしていないなどの特長がある。音楽科の授業を想定したとき,たとえば,歌唱の場面で,歌い方のお手本としてボーカロイドの歌声を提示することの意義は見いだしにくいが,創作の場面で,歌詞つきの旋律を創作するという授業を想定することはできる。歌詞を自ら考え,または既成の歌詞を入力し,その言葉のイントネーションやイメージをもとに旋律線を考えていくという方法である。ボーカロイドは,入力した音をすぐに再生し歌ってくれるので,何度も聴いて修正し,それを繰り返す中で自分のイメージに近いものを完成させていくという方法である。この思考の過程には,近年注目されているプログラミング的思考に重なるものがある。また,児童生徒が個別のタブレット端末を用いて創作の学習ができれば,まさにアクティブラーニングの実現へとつながる可能性があることを指摘した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は,音楽科デジタル教科書の特徴およびボーカロイドの特徴をつかんだ。音楽科の授業を想定し,ボーカロイドで,できることとできないことを明らかにした。特に,創作指導の分野での利用の可能性に注目し,その授業のイメージを構想するところまでの研究は順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
創作指導の分野を中心とし,ボーカロイドを組み込んだ具体的な授業モデルの提案を行う。デジタル教科書の児童生徒版は,まだ発売されていないが,児童生徒がタブレットを一人一台用いて授業を行うことを想定し,その授業モデルを提案していきたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度末に視察予定だった学校への視察ができず,旅費として予定した予算が未使用金額となっている。
|
次年度使用額の使用計画 |
未使用金額は,平成29年度の請求額と合算し,学校視察や情報収集のための旅費に当てる。
|