学習現場において,学習者のノートの筆記量とテストの得点,すなわち理解度には相関があると言われている.一方で,学習はペンを用いてノートに板書したり,問題に解答することがほとんどであり,ペンは学習とは切り離せない道具となっている.本課題では,筆記量や筆記速度といった筆記行動をセンシング可能なペン型デバイスを実装し,実際の教育現場に適用することで,筆記行動と理解度の関係を,期末テストなどの長期的視点と,授業中の小テストなどの短期的視点から定量的に明らかにすることで,ペン型デバイスを用いた理解度評価手法を確立することを目的とする. 本年度は,昨年度実装したペン型デバイスを用いて,被験者実験を実施し,筆記行動から理解状況を推定する手法を検討する.理解状況の評価には,解答した問題の正誤判定と学習者の解答に対する自信度を組み合わせて評価する統合評価法を用いる.また,筆記行動取得の手段として,学習者のペンを握る力(ペン把持力)を用いる.昨年度実装したペン型デバイスでは,人差し指と親指からかかる把持力を20Hzで取得できる.60名の実験データより,理解状況は,特に解答時間やペン把持力の平均変化量に表れていることが確認された.また,ペン把持力には自信度の影響が強く表れていることが分かった.理解状況の推定精度を評価したところ,ペン把持力から得られる情報と解答用紙から得られる情報(正誤判定)を組み合わせることで72.1%の推定精度が得られた.
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