研究課題/領域番号 |
16K12561
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研究機関 | 産業技術大学院大学 |
研究代表者 |
橋本 洋志 産業技術大学院大学, 産業技術研究科, 教授 (60208460)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | RHI効果 / ディジタルハンド / 技能学習法 / 錯覚 / 手姿勢 / 状態遷移 |
研究実績の概要 |
手の技能学習という複雑で、身体と感覚の一致を短期間で図ることが難しい問題を考える。本研究の目的は、開発してきたデジタルハンドを有効活用することで、RHI効果(後述)という錯覚を覚える現象の安定化を図り、この二つを上手に融合することで、効率的な手の技能学習法を提案し、検証を通して、本学習の設計法を確立することにある。このため、初めに手の技能種類の選定、技能の基本動作の分類という、学習の客観性・再現性を与える作業を行う。次に、開発したデジタルハンドの任意視点や手姿勢の記録機能を用い、学習論で重要とされる振返りができるよう、手の姿勢変化の定量的に見せるなどの工夫を施す。H28年度は準備期間として、次のA),B)を実施した。 A-1)手の技能種類の選定 器用な手の動きの例として、ハサミを取り上げ、この使い方の熟練者による模範演技を記録し、インタビューによる技のコツなどを記録した。A-2)基本動作の分類 各基本動作を記号表現することで、基本動作の組合せで成り立つ技能の動作の客観的表現を確立し、実験の再現性が得たことを確認した。 B-1)モデルパラメータの選定 RHI効果が安定して生じるか否かは、デジタルハンドと仮想道具のモデルを構成するパラメータが影響する。このパラメータは、視覚パラメータの他に、物理パラメータも含むため、これらをケーススタディ的に変化させたときの実験を行った。B-2)操作過程の振返り法の検討 手の姿勢を任意の視点から見て、学習の過程(手の姿勢の変化)を振返えることができるよう、記録ビデオのWebアップと再現システムを作成した。B-3)RHI効果の心理測定 B-1),B-2)を組合せてRHI効果の心理測定を行うためのインタビュー項目の精査を行い、この予備実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時で述べた目的を実現するための項目は、上記の研究実績で述べた5つの項目に集約され、これらを実施した。ここで述べたように、A-1)については順調な進捗といえる。A-2)に関して、各基本動作を記号表現することで、基本動作の組合せで成り立つ技能の動作の客観的表現を確立し、実験の再現性が得たことを確認したため、順調な進捗といえる。B-1)について、モデルパラメータの選定 RHI効果が安定して生じるか否かは、デジタルハンドと仮想道具のモデルを構成するパラメータが影響する。このパラメータは、視覚パラメータの他に、物理パラメータも含むため、これらをケーススタディ的に変化させたときの実験を行った。カットアンドトライに頼っている状況である。B-2)操作過程の振返り法の検討として、手の姿勢を任意の視点から見て、学習の過程(手の姿勢の変化)を振返えることができるよう、記録ビデオのWebアップと再現システムを作成でき、順調な進捗といえる。B―3)に関して、B-1)の事例の整理が途中なため、効果的な実験に入る予備段階にあるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度では、前年度のB-1)、B-2)、B-3)の方法論を再検討する。これと同時に下記のC-1)に着手し多くの事例を扱う。 C) 手の技能学習の評価と設計法 A)、B)の成果を統合した学習システムを用いて、下記の課題を遂行する。 C-1)学習効果の測定と検証 初めに、RHI効果が生じるか否かを検証するため、何の条件も設定せずに、数名に対して本学習システムを使用してRHI効果が生じる割合、および生じたときの学習効率(学習時間、疲労度など)を検証する。この後に、被験者を幾つかのグループに分けて、B-1)のパラメータ、B-2)の振返りの条件を変えて、どのパラメータ・条件がRHI効果が生じやすいか、また、生じた時と生じない時とでの学習効率を検証する。この実験・検証のサイクルは学習期間に1か月強、検証に2~3週間要すると見込んで、2か月/サイクルを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
ディジタルハンドの作成費が、計画よりも安価にできたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究遂行に適正かつ効果的に使用する。
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