手の技能学習という複雑で、身体と感覚の一致を短期間で図ることが難しい問題を考える。本研究の目的は、開発してきたデジタルハンドを有効活用することで、RHI効果(後述)という錯覚を覚える現象の安定化を図り、この二つを上手に融合することで、効率的な手の技能学習法を提案し、検証を通して、本学習の設計法を確立することにある。このため、初めに手の技能種類の選定、技能の基本動作の分類という、学習の客観性・再現性を与える作業を行う。次に、開発したデジタルハンドの任意視点や手姿勢の記録機能を用い、学習論で重要とされる振返りができるよう、手の姿勢変化の定量的に見せるなどの工夫を施した。この準備を経てH30年度は、次のことを実施した。 B)デジタルハンドを用いたRHI効果の有効な引出し法 RHI効果は反復経験して生じるものであり、生じるまでに時間を要する。この効果を速やかに引き出す方法を見出す。仮想空間内のデジタルハンドや物体のデザイン、また仮想空間内での任意視点、さらに、操作時の各関節の姿勢を振返ってみることができること(操作過程の振返り)、これらの機能を用いて、視野・視力問題を解決すると共にRHI効果の有効な引き出しに関する実験を行った。 C)手の技能学習の評価と設計法 これまでに得られた成果を手の技能学習システムに導入し、どのように身体と認知の不一致問題を解決し、かつ学習意欲・継続性にどのように役立つかを明らかにし、本システムが有効となる学習設計法と評価法を検討した。 以上の研究において、手の状態だけでなく、環境によってもRHI効果に影響が与えられることが認められ、この環境と心理の関係性に関して幾つかの知見を得た。
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