2018年はアイトラッキングシステムを使って得た視線注視のデータの分析および、学会での発表をおこなった。 (1)2016年に作成したアイトラッキングシステムのプログラムを使用して、12人の被験者に3冊のまんがを読んでもらい、その視線移動を記録した生のデータを見える形に数値化した。3冊のまんがは、『ブラックジャックによろしく』、『リトルウイッチ』、『[クー]』を使用した。それぞれ、ジャンル、絵柄の違うものである。データは、モニター上の注視点の座標を、その経過時間を記録することで得られたもので、総数4494頁のアイトラッキングデータを分析可能な数値化をおこなった。 (2)2018年に得られた数値化された実験データを統計的に分析するためにソフトウエアの開発、及び分析をおこなった。具体的には数値データをCSV形式に変換し、明らかに実験目的から外れるデータ等を除き分析環境を整えた。更にCSV形式のデータをExcelで一般的なデータに変換し、統計ソフトR、及びR言語によって統計的解析を行った。 (3)2018年日本映像学会全国大会(東京工芸大学)において「Eye-trackerによる視線追跡における図像読み取りの基礎研究」と題して(1)、(2)で得られた解析結果を発表した。この分析により、まんがを見る(読む)際の視線の動きには、ある程度の法則があること、さらにこれまで心理学で言われてきた「注意」等に概念との関わりが明らかになってきた。例えば、まんがは、背景とキャラクタによって構成されるが、視線の注視は、基本的にキャラクタに対してしか行われず、背景は多くの場合素通りしてしまう。また、キャラクタに関しては、目と口に注視が集中する傾向がある。
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