研究実績の概要 |
本研究は、申請者が開発した水深4,000 mまでの耐圧性を持つ採水機ROCS(Rotary Clean Seawater Sampler)の時系列採水機能を活用した海洋中・深層で使用可能な現場微生物培養装置を用い、暗黒海(dark sea)である海洋有光層下(水深200 m以深)水中の微生物(細菌)群集の増殖速度や増殖特性について直接現場培養から定量評価することを目的に行う。特に、海洋中・深層の持つ特徴である、低温、高圧下で使用可能なROCS培養装置の更なる改良、ならびに現場培養実験を平行して行うことで、暗黒海水中の細菌群集の増殖および代謝特性を明らかにする。 H29年度は、H28年度に引き続き、これまでに判明しているROCS現場培養装置の不具合点を解消するため、装置改良、特に電源供給部分の多源化を行った。具体的には、まず電源供給の安定化に関する改良を実施した。本年は1航海で複数回の測定実験を行う場合を想定し、再充電可能な小型リチウムイオン電池バッテリーと世界中で使用可能な充電装置を作成した。さらに、これまでの実験から判明していた、培養槽となる採水ボトル内の添加基質の不均質混合を解消するためのボトル内の攪拌に関する改良、採水筒への培養試料導入時に発生が懸念されたリーク防止に関する改良、等を行った。 培養装置の改良と並行して、H29年度もROCS現場培養装置を用いた海洋中・深層(水深10 - 4,000m)での現場培養実験をカリブ海および南大洋にて実施した。カリブ海航海時に添加した基質が培養ボトル内でうまく混合していない可能性が判明し、南大洋航海までの期間を利用して、基質の攪拌に関する検討と改良を行った。H29年度もH28年度で得られた予察的結果と同様に、同一水深海水試料を船上に引き上げて現場水温・大気圧下環境で実施した船上培養とは異なる増殖特性を示す予察的な結果を得た。
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