研究課題/領域番号 |
16K12578
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
幸塚 麻里子 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (60706365)
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研究分担者 |
鈴木 庸平 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (00359168)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ゲノム / 海洋生態 / 海洋資源 / 高塩分環境 / メタンハイドレート / 鉱物 |
研究実績の概要 |
本研究では、メタンハイドレート中で過去の生物が長期保存されているかの検証とメタンハイドレートが周囲に作り出す高塩分環境に適応した微生物群集の解明を目的とした。前年度までの申請者による研究で、メタンハイドレートが存在する海域の堆積物中では、10万年前までの化石由来のDNAを抽出し遺伝子解析可能なことが示されている(Kouduka et al 2017)。平成29年度は、前年度に日本海海底下のハイドレート試料から抽出したDNAを対象にメタゲノム解析して得られた原核生物のメタゲノムデータを用いて「メタンハイドレートが形成する際に付随する高塩分環境に適応した好塩性微生物の存在の確認」を実施した。平成28年度には原核生物の好塩性メタン生成古細菌のDNA検出に成功していたが、周囲の堆積物と比較して高塩分環境に適応したと考えられる固有の生態系はメタンハイドレート中では発見することができなかった。改めて、メタンハイドレート及び同じ海域で掘削された堆積物や鉱物の顕微鏡観察を実施したところ、生物由来の鉱石として知られるドロマイト鉱石で周囲とは明らかに異なる数の微生物細胞が確認された。さらに調べると、鉱石の内部の外側と遮断された空間に微生物細胞が集中していることがわかった。これらの微生物細胞は、鉱石が形成した時に閉じ込められたもので、当時の環境に適応した種の可能性がある。この閉じ込められていた微生物群集を明らかにするために、DNAを抽出しメタゲノム解析を行う必要が生じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は、計画通りにメタンハイドレートと堆積物から抽出したDNAをメタゲノム解析して得たメタゲノムデータを用いて、過去の高塩分環境に適応したと考えられる微生物群集の有無を調べた。しかし、解析の対象としたメタンハイドレート試料では高塩分環境に固有の微生物生態系はされなかった。 しかし確認のために同じ海域で採取した試料を顕微鏡観察していった結果、鉱石内部に過去の生態系が閉じ込められている可能性が示された。この鉱石内部からDNAを抽出しメタゲノム解析して生態系の正体を明らかにする必要性が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、周囲とは明らかに異なる数の微生物細胞が確認された鉱石を対象にDNA抽出及びメタゲノム解析を行う。特に鉱石の内部には、鉱石が形成した時の環境に適応した微生物群集が保存されている可能性がある。そこで、申請者が先行研究で開発してきたDNA技術を適用し、内部と外部で分けて微生物群集をそれぞれ明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究対象としていたメタンハイドレートと同じ海域で採取されたドロマイト鉱石中に、微生物細胞の存在が顕微鏡で示唆され、過去の生態系が保存されている可能性が示された。次年度は確認された細胞が、鉱石が形成した当時のものか調べるためにDNAを抽出しメタゲノム解析を行う。延長分は解析費用及び実験補助員の謝金として利用する予定である。
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