研究課題
平成28年度はまず、レーザー分光法を用いた一酸化炭素分子の超高感度計測が可能と考えられる4.6ミクロン付近の複数の孤立振動回転線に注目し、分子分光データベースに収録されている分光パラメータを使って、吸収線の温度および圧力依存性をシミュレーション計算により評価した。圧力依存と温度依存を同時に評価するため、Voigt関数を用いた。これにより、一酸化炭素分子の計測として、100 Torr 程度のセル圧力が適していることが明らかになった。これは、減圧することによって、吸収線の線幅が狭くなり、他分子からの干渉を受けにくくなるためである。またシミュレーション計算により、計測に与える温度ドリフトの影響を抑えるための、技術的な工夫、具体的には試料ガスの温調が必要であることが示唆された。これらを踏まえて、中赤外レーザー光を用いて、一酸化炭素分子の検出実験を実験室内にて行った。分光法としては、軸はずし型の超長光路吸収分光法を用いた。光学セルにガスを導入するためのガス導入系および真空系を製作した。平成28年度はまた、微気象学的なフラックス計測法の一つである緩和渦集積法の主要部を設計し、組み立てを行った。超音波風速計は研究代表者が所有しているものを使用しているが、ガスサンプリングラインおよび排気系は、独自に作成した。開発した緩和渦集積装置を、大阪府堺市にある大阪府立大学の建物屋上に設置し、二酸化炭素フラックスの計測を行い、渦相関法によるフラックスと比較した。その結果、開発した緩和渦集積装置が正しく動作していることを確認することができた。
2: おおむね順調に進展している
レーザー分光装置の開発ならびに緩和渦集積装置の開発ともに、おおむね当初の予定通りに開発を進めることができている。
当初の計画どおりに進めていく予定である。
次年度のテスト観測で使用を予定しているガスサンプリングラインなどを予備的にテストしたところ、既存の観測設備の配管やサンプリングバッグ等に、著しい劣化が生じていることが判明した。この劣化は、気温の変動や紫外線によるものと予想される。そのため、劣化部分の補強や刷新が必要なため、28年度経費の一部を、29年度へ充当することにした。なお、28年度は、双曲線簡易渦集法によるサンプリングシステムについて、過去に試作したサンプリングシステムを補修して使用することで、研究費の節約を図ったため、当初計画からの遅れ等は発生していない。
29年度の観測では、無人の森林にサンプリングシステムを取り付ける必要があり、サンプリングシステムに劣化が生じている箇所の厳重な補修を行うべく、特に配管(ステンレス、DKチューブ、テフロンチューブ、コネクター)やサンプリングバッグ等の消耗品に使用する。
すべて 2016 その他
すべて 学会発表 (2件) 備考 (1件)
http://www.rish.kyoto-u.ac.jp/laeia/members/tkenshi/index.html