研究実績の概要 |
新たな窒素循環プロセスであるアナモックス反応に関する研究を行った。アナモックス反応とは,ヒドロキシルアミンとアンモニアが反応してヒドラジンを形成した後,最終的に分子状窒素に変換され系外に放出するというもので,これまでの硝化-脱窒による窒素浄化とは異なる,新たな窒素浄化プロセスである。初年度の研究では,ヒドロキシルアミンとヒドラジンが中間体という性質上不安定なため環境水に適用可能な優れた定量方法がなかったことから,それらの定量法を開発し論文化した。ヒドラジン(1)はAnalytical Sciencesに掲載済みでヒドロキシルアミン(2)は同じくAnalytical Sciencesに受理され掲載待ちである。 また,開発した両定量法を用いて,汽水湖中海を対象に調査研究を進め,ヒドロキシルアミンとヒドラジンが同時に観測されたことにより,これまで一般的な脱窒による窒素除去のみしか考えられていなかった中海で,アナモックス反応が起こっていることを確認した。さらに,中海では,夏季に海水の流入に伴う酸素供給と光阻害による亜硝酸イオンの蓄積を起点にアナモックス反応が生じていることを見出している。 1)Kato T., S. Sugahara, T. Kajitani, Y. Senga, M. Egawa, H. Kamiya, and Y. Seike (2017): Analytical sciences, 33:487-491. 2)Kato T., S. Sgahara, M. Murakami, Y. Senga, M. Egawa, H. Kamiya, K. Omata, and Y. Seike (2017): Analytical Sciences, in press.
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