研究課題
福島第一原子力発電所(FDNPP)では、これまでに、放出物質からメルトダウン時の溶融燃料に関する考察が行われてきたが、溶融燃料と炉内構造物との混合により形成され、現在も残存しているデブリの情報は未だ限られている。本研究では、環境中に放出されたFDNPP由来デブリフラグメントを世界で初めて発見し、最先端原子分解能電子顕微鏡を駆使した原子分解能解析によって、炉内で起きた溶融燃料の化学反応、そして現在のデブリの状態を考察した。本研究で発見した全てのデブリフラグメントはCsMPとともに存在しており、二種類の性状が見られた。一つは~70 nmのuraninite (UO2+x)粒子がエピタキシャル成長した~400 nmのmagnetite (Fe3O4)の自形結晶に包まれて存在していた。MagnetiteにはUの核分裂生成物であるTcやMoが共存していた。二つ目は~200 nmのzirconia (ZrO2)とuraniniteの等軸晶系の共融混合物で、UとZrの混合比はU/Zrモル比で0.14-0.91の範囲であった。共融混合物には~6 nmの空孔が見られ、揮発・気体成分を取り込んだ可能性を示唆した。以上の結果から、炉内での水蒸気による金属構造物の酸化反応が、被覆材(Zr合金)だけでなくFeを含む構造物に対しても部分的に起きていることが分かった。また、生成した酸化物は核燃料の主成分であるuraniniteと炉内でも共存していると考えられる。特にuraniniteとzirconiaの混合物は高温安定相である等軸晶系の構造を示したことから、高温の溶融デブリが急冷される環境にあったことがわかる。デブリフラグメントに空孔や核分裂生成物が存在することから、残存するデブリにはナノスケールで放射性物質が含まれる可能性が示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
国際会議発表、国際誌発表、プレスリリース、新聞掲載までなされており、当初の予定を大きく超える成果が得られている、と考えている。
今後は、最先端分析技術を組み合わせながら、CsMPの多角的な調査を行っていく。
最終年度に海外でおこなわれる国際学会で成果を発表するために、その分を確保したため。
すべて 2017 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
Scientific Reports
巻: srp42118 ページ: srp42118
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