本研究では、レーザー散乱光検出・粒子飛行時間 (PTOF) 計測に基づく粒子分類と、対向流バーチャルインパクタ (CVI) に基づく流路分離を組み合わせて、ミクロン粒径の粒子分級技術を開発することを目的とした。 平成28年度は、PTOF部の開発に向けて、レーザー散乱光検出装置 (波長1.0ミクロン) を用いてサブミクロン粒子についての予備実験を行った。ポリスチレンラテックス (PSL)、および単分散に分級した無機塩粒子を装置に導入し、レーザー散乱光信号の波高分布測定を行った。PSLと無機塩粒子では、波高分布のピーク位置と幅に違いが見られた。 平成29年度は、前年度に得られた実験データを詳細に解析した。波高分布の幅の支配要因として、粒径の幅や複素屈折率の違いではなく粒子ジェット広がりが顕著に効いていることが分かった。PTOF部において粒子物理特性に応じた分類を行うためには、二波長レーザーによる散乱光検出に加えて、粒子ジェット広がりを大幅に低減する必要がある。波長532 nmと635 nmのレーザー、および改良型のシースエアノズルを組み込んだ検出システムを新たに製作した。シースエア流量とサンプル流量を様々に変化させて評価実験を行ったが、粒子ジェット広がりを抑えるための最適条件を見出すには至らなかった。 平成30年度は、二波長レーザー散乱光検出システムを用いてPSL粒子の検出を行った。二つのレーザー光線の相対位置を調整することで散乱光信号ピークの時間差を検出できるようにした。その結果、散乱光の二波長強度比と粒子飛行時間の同時測定が可能となった。研究期間内において当初目的であったミクロン粒子分級技術は実現できなかったものの、エアロゾル粒子の物理特性を多角的に捉える装置の実現に向けて基礎を築くことができた。
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