研究課題/領域番号 |
16K12590
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
紺屋 恵子 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 北極環境変動総合研究センター, 技術研究員 (70506419)
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研究分担者 |
宮川 拓真 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 研究員 (30707568)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ブラックカーボン / エアロゾル / 北極域 / アラスカ |
研究実績の概要 |
1)アラスカ山脈のGulkana氷河・Jarvis氷河、Black Rapids氷河において2017年4月中旬に採取した積雪試料を、実験室にてSP2という機器を用いて分析を行った。分析作業は、技術者を雇用して実施した。各試料について、重量濃度および粒子数の粒径分布が明らかになった。解析を行った結果、ブラックカーボンの重量濃度は、それぞれの試料採取場所ごとの間で値にばらつきはあったものの、平均で6μg/L程度の量が得られた。試料は合わせて7箇所で採取され、表面から0~2cm、2~10cmの層、前年の夏に表面だった層の3種類の層から採取された。積雪中に含まれるブラックカーボン以外のエアロゾルについても粒子数を測定し、ブラックカーボンの粒子数と比較した。 また、化学物資循環を予測する領域気候モデル(WRF-chem)で予測された値と近い値を示した。モデルでは、シベリアの森林火災の影響の有無を調べるため、森林火災の影響を省いた場合についても計算を行った。今回扱った2017年春の試料については、シベリア森林火災の影響は20%程度だった。 2) 降水採取・分析:モデル検証精緻化に資する降水(雨雪ともに)について、引き続き富山大学で冬季間に1日間隔の試料採取を行った。また、より広範な領域における検証を行うために、北極海(研究船みらいの北極海航海)において採取された降水の分析も行った。 3) 中高緯度のBC沈着フラックス定量とモデルとの比較:北極海上・富山におけるBC沈着フラックスを推定した。領域化学輸送モデルWRF-Chemや全球モデルNICAM-Chemの計算結果と比較を実施した。富山のような狭い領域で起伏の大きい地点での降水場の予測は、解像度の違いに大きく影響受けることがわかり、アラスカ氷河においても同様な点を考慮してモデル計算を行う必要があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北極域(アラスカ)でのサンプリングと、その試料分析、分析結果を使用した解析が進んでいる点では順調と言える。当初予定に追加して、試料に含まれる全粒子の数を測定し比較することができた。 当初予定では、シベリアについても同様の観測を行う予定であったが実施できなくななった。しかし、当初予定に加えてアラスカでの多点観測を行うことができた。その結果、数十km程度離れた条件の異なる場所のでの濃度の違いを検討することができた。 アルベドについての観測や解析は実施できていない。アルベドを測定するのは困難であったため、積雪試料を多く採取すること、ブラックカーボン以外のエアロゾルの粒径を測定することとした。 化学物質輸送モデルの利用により、ブラックカーボンの起源について推定することができた。アラスカのブラックカーボンの起源についての検討は一時期のものであり、モデルによる起源の推定はシベリアの森林火災についてのみである。試料採取地点の近隣地域からの輸送される物質についても検討する必要がある。富山については、起伏の大きな領域について表すことが難しく、検討課題である。
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今後の研究の推進方策 |
アラスカについて、本年使用した試料は、2017年の4月のある時期に一回に採取したものである。年ごとの比較のため、来年度も試料採取した同サイトにてサンプルを採取し比較する。また、同年の時系列変化を追うため、一つのサイトにて、より深部までのサンプルを取得して分析を行う。分析後、積雪中に含まれるブラックカーボンの重量濃度から、アルベドのへの影響を検討し、夏季の日射吸収量の違いから、ブラックカーボンの雪面融解に寄与する量を推定する。他の地域の氷河表面の融解との比較を行い、アラスカの氷河融解に寄与する物質についてブラックカーボン・ダスト等の影響を評価する。 富山については、雪・雨についての分析を引き続き行う。長期にわたり継続的に採取したため今度はこれら試料について分析を行い、降水の中に含まれるブラックカーボンが降水の形態による違いを明らかにする。同様に、北極域についても、取得した試料の分析を継続し、それらデータの解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が産休および育休期間を取得したため研究期間を延長し来年度までとした。そのため、研究内容や進行に変更が生じ次年度の使用額が生じた。分析を進めるため、技術者雇用を継続して行い、より早く研究を進捗させることとした。
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